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動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版 後編
― 家族性高コレステロール血症の診断と治療 〜成人から小児まで〜 ―
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札幌医科大学医学部循環器・腎臓・代謝内分泌内科学
矢野 俊之氏
前編では、一般的な脂質異常症の診断と治療について解説しました。後編は、遺伝子的要因によりコレステロール値が上昇し、動脈硬化性疾患になりやすくなる“家族性高コレステロール血症”について解説します。
1 家族性コレステロール血症(FH)とは?
遺伝的にコレステロールが高くなる病気です。
LDL(悪玉)コレステロールを肝臓に取り込む機能が落ちているために、結果として血液中にLDLコレステロールがたまります。
遺伝的にLDLコレステロールを取り込むことができないため、若い時から採血でLDLコレステロールが高くなります。
そのため、比較的若い頃から動脈硬化がすすみ、心筋梗塞や脳梗塞を発症します。そのため早期に診断し、予防していくことが重要です。2 頻度と遺伝
多くは常染色体優性遺伝形式をとります。簡単に言いますと、父親と母親から遺伝子を一つずつ受け継いでいますが、受け継いだ遺伝子のどちらかもしくは両方に病気の原因があると発症します。
LDLコレステロールが高くて治療を受けている人の約10%弱に潜んでいると言われており、決して稀な病気ではありません。
受け継いだ遺伝子の両方に病気の原因がある:ホモ接合体と呼ばれています。100万人に1人以上の頻度と言われています。重症型です。平成21年10月から特定疾患治療研究事業における対象疾患に認定されています。
受け継いだ遺伝子のどちらかに病気の原因がある:ヘテロ接合体と呼ばれています。500人に1人以上の頻度と言われています。
家族性コレステロール血症の中では軽症になりますが、病気としては決して軽症ではありません。3 症状
大部分の患者さんはLDLコレステロールが高いこと以外に症状はありません。
しかし、角膜にコレステロールが沈着し、黒目のふちに白いリングが出現することがあります(図1)。
角膜輪と呼ばれています。高齢者で出現することがありますが、50歳未満でみられる場合は家族性コレステロール血症を診断するきっかけになります。さらに、重症型のホモ接合体の患者さんでは小さい頃から黄色腫(おうしょくしゅ)という黄色のかたまり・いぼが手指・肘・膝・まぶたに出現し、診断のきっかけになることがあります(図2)。
そして、一番重要なことは、小さい頃からLDLコレステロールが高値であるために未治療の男性で30〜50歳、女性で50〜70歳に狭心症や心筋梗塞を発症することです。怖い話ですが、突然死の原因にもなります。
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