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NO.11 |
心臓血管病と食事療法 - 糖尿病
(2−2)天使大学 看護栄養学部栄養学科教授 伊藤 和枝
食事療法のポイントは、
@適正な食事エネルギーの摂取
食事の量を減らすと血液中のブドウ糖が減り、膵臓のインスリン分泌が良くなり、ブドウ糖を筋肉や肝臓に多く取り込むため、血糖が下がります。しかし、エネルギー過剰摂取の状態では、ブドウ糖が多くなることで、インスリンの分泌が抑えられ、高血糖の状態が続きます。この現象を糖毒性と呼んでいます(図1)。適正なエネルギー攝取が大切で、食事は少ないほど良いというわけではありません。適正なエネルギー量は、標準体重に25〜30kcalを乗じた値となり、平均1600kcal位です(表1)。標準体重は身長(m)×身長(m)×22で求めます。実際に、現在体重が標準体重より多い場合はエネルギーの過剰攝取が考えられます。
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Aバランスの良い食事をとる
決められたエネルギーの中で、たんぱく質・脂質・糖質のバランスをとります。和洋折衷の食事とし、主食、主菜、副菜を組み合わせることで、栄養素のバランスを取ることが出来ます。
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B食物繊維を食事の初めに摂取する
食物繊維は糖の吸収を遅延させ、血糖の上がりを穏やかにします。緑黄色野菜、きのこ、海草、大豆、雑穀など食物繊維の多い食品を食事の最初に食べるとより効果的です(表2)。生野菜だけでなく、青菜のお浸し・煮物など、1食に2皿の野菜料理が理想です。
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C脂肪を取り過ぎない
脂肪はインスリンの働きを悪くすることが知られ、脂肪毒性と呼ばれています。なかでも、牛肉、豚肉、鶏肉に多く含まれる飽和脂肪は、インスリンの働きを悪くし、血糖の高い状態が食後長時間続くことを私達の実験でも認めています。牛肉・豚肉は脂肪の少ない赤身を、鶏肉は皮なしを選びます。一方、魚、特に青魚の脂肪(エイコサペンタエン酸)はインスリンの働きを良くします。肉より魚を選びましょう。油を使った料理も1日1〜2皿までにします。和食に比べ油を多く使う中華や洋風料理では、高脂肪食になりやすく、食後高血糖の状態が長く続きます。
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D糖質を取り過ぎない
清涼飲料、菓子に多く含まれる砂糖は吸収が早く、同じエネルギー量でもごはん・いも等に比べて血糖値を高くします。料理に使うみりんも砂糖同様に注意します。果物の取り過ぎに注意。糖尿病の場合、果物の果糖はブドウ糖に変わりやすく血糖値を高くします。栄養的には果物の代わりは野菜で出来ます。しかし、野菜の代わりは果物では出来ません。果物は食事の一部として食後に少量取るようにします。
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Eアルコールは避けます
アルコールはインスリンの働きを悪くします。HbA1cが7%以上の場合は禁酒します。7%未満の場合は、1週間にコップ1杯のビール程度なら、さほど問題はありませんが、エネルギー量とのバランスを考えてコントロールします。
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F食塩は少な目に
糖尿病は腎臓病や高血圧を引き起こしやすいので注意します。
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G食事は朝・昼・夕にほぼ等しく、間食は避ける
食事の回数を減らすと1食当たりの量が多くなり、血糖値が高くなります。間食は下がりかけた血糖を再び高くし、1日中、高血糖の状態を作ります(図2)。間食・夜食は避けるようにします。但し、1型糖尿病では、インスリン注射を就寝前に行うため、医師の指示によりインスリン注射の量に合わせて補食(間食)を行います。
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H食後に有酸素運動を30分
1型糖尿病では食前の運動は危険です。食後の歩行は血糖の上昇を抑えます。摂取したブドウ糖の殆どは筋肉で利用されるため、歩行で筋肉が強化されれば、インスリンの感受性が改善され、血糖の取り込みが良くなり、血糖が低下します。
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腹8分目の適正な食事と食後の歩行が糖尿病の予防・治療の両輪です。

