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増える肥満
(1−1)
札幌市中央健康づくりセンター長 医学博士 西島宏隆
■背景に生活様式の変化
近年、肥満と肥満に最も関係している疾患といわれる糖尿病が増えている。肥満はカロリー摂取と消費のバランスできまってくるはずであり、事実、運動と食事療法は肥満治療の原則である。プレンティスは英国でのデータからここ40年間肥満が増えてきている原因を分析している(図1)。
それによるとカロリー摂取は、肥満の増加に伴って増えてきているわけではなく、自動車の数やテレビの鑑賞時間、すなわち身体活動の低い時間が増えていることが示されている。生活様式の歴史を考えると十分うなずけるデータである。
■肥満程度の測り方
さて、札幌市中央健康づくりセンターの札幌市民のデータはどうであろうか。その前に肥満程度をどうやってはかるかについて説明する。
現在世界中で一番標準として使われている方法は体格指数(BMI:Body Mass Index)である。これは昔からいろいろな式によって計算されてきた身長と体重の比の一種である。実際の計算方法は次の通りである。
BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)である。例えば体重70kg、身長160cmとすると
BMI=70÷1.60÷1.60=約27.3となる。簡単でしょう。正常値の範囲の真ん中がBMI=22となるので27.3は27.3÷22×100=約24%の肥満となります。男女ともにBMIで判定すると、やせ<20、普通≧20〜24、過体重≧24〜<26.4、肥満≧26.4となります。自分のBMIを計算してみましょう。
巷(ちまた)にはいろいろな体脂肪計があふれていますが、それらはほとんど電気インピーダンス法を使ったもので、それがいま説明したBMIより肥満の程度をあらわすのに良いというデータはありません。
■運動増えるほどBMI減少
では図2の札幌市民のデータを見てみましょう。運動習慣が増えるほどBMIが減少しているのが分かります。もちろん原因か結果か、というところはこのデータからは分かりませんが、お互いに関係したものであることは間違いなさそうです。
始めに肥満と一番関係している内科の病気は糖尿病だと書きましたが、図3,4に見るようにBMIが増える程どんどん空腹時血糖(FBS)が増加しているのがわかります。もっとBMIを細かく分けても検討してみましたが、傾向は同じで、BMIがどれくらいのところから血糖が増加しはじめるのか、境界値のようなものは全くありませんでした。
■高血圧、高脂血症に悪影響
次に肥満と関係のある内科の病気は高血圧といわれています。図5を見てみましょう。収縮期血圧(SBP)はBMIの増加とともにほぼ直線的に増えています。肥満は他の高血圧にかかわる運動不足、食塩摂取などの生活習慣と比べても最も高血圧に悪いものです。
高脂血症との関係を見てみましょう。善玉(HDL)コレステロール、中性脂肪との関係(図6,7)はほぼ直線的です。肥満になるほど善玉コレステロールは減って、中性脂肪が増えます。総コレステロールとの関係は図8のようになっています。
確かにBMIが増えると総コレステロールも増加するのですが、正常値を超えたところで頭打ち現象が見られます。まだ分からないところがあるのですが、やはり食事の量とともにその内容が悪玉コレステロールの増加には重要な意味を持っているようです。
肥満の予防、治療にはどんな運動が良いのでしょうか。秘密の方法があるわけではありませんが、手っ取り早い方法はウォーキングでしょう。次回で取り上げたいと思います。

