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高齢者の禁煙も有効 札幌で心臓・脳卒中予防講演会
糖尿など4つ重なると危険
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高血圧、喫煙、高脂血症、耐糖能異常(糖尿病予備軍)は冠動脈の危険因子で、四つを重ねて持つと、全くこれらがない人の約30倍も心臓病になる危険性がある−財団法人・北海道心臓協会の講演会で北畠顕北大医学部教授はこう指摘しました。 講演会は同協会と北海道新聞社が共同主催して3月18日(火)、札幌の道新ホールで開かれた「心臓病・脳卒中予防講演のつどい」。約300人の聴衆が同教授や釧路市丹頂鶴自然公園参与の高橋良治氏の話に耳を傾け、深い感銘を受けました。 また会場ロビーでは恒例の循環器疾患無料相談には北大、札幌医大、旭川医大の専門医8人が参加、不安を持つ市民が真剣な表情で専門医の説明に聴き入っていました。 |
ロビーで真剣な相談続く
講演会は北大医学部の菅野盛夫教授が司会を担当して始まり、初めに海外出張中の伊藤義郎理事長に代わって飯村攻副理事長(札幌医大名誉教授)が開会のあいさつ。「北海道心臓協会は心臓・血管病をどう予防して行くかを旗印にしている。60歳以上の死亡では5〜6割が心臓・血管病で、がんの2割より多く、想像以上に大変な病気。緊急の場合、救命はできるが、根治はできないという特徴がある。予後の日常活動性をどう維持して良質な生活を保持するかが今後の課題だ」と述べました。
冒頭、今年度7回目になる伊藤記念研究助成金の授与式がありました。10件の応募のうち旭川医大第一内科研究生の川辺淳一さん(34)、札幌医大第二内科助手の斎藤重幸さん(39)、旭川医大薬理学講座助手の原明義さん(37)の3人に飯村副理事長から賞状と助成金がそれぞれ手渡されました。
次いで講演会に移り、高橋さんが釧路湿原におけるタンチョウの興味深い生態をスライドを使いながら、名調子で紹介しました。一例を挙げますと、「タンチョウは風上に向かって1本足で立つが、これは天敵に襲われたとき上げていた足で素早く大地に1歩を踏み出し、短時間で飛び立つためで、本能的なものだ」と話しました。
このあと北畠教授が演壇に立ち、「最近では油っこいファストフードで子供でも血中コレステロール値が高まっている」と警告し、「これを低く抑えるには繊維分の多い野菜や海藻類、キノコ類を多く食べ、動脈硬化を予防するエイコサペンタエン酸(EPA)を含んだ青い背の魚、イワシなどを積極的にとるようにしてほしい」と聴衆に訴えました。
北畠教授の講演要旨次の通り。
1、厚生省は昨年、がん、心臓病、脳卒中など成人病を生活習慣病と呼ぶよう提唱した。成人病というと年をとったら、だれでもかかってしまうと受け取れるが、生活習慣病というと「病気になるのは、あなた個人のせいですよ。ならないよう努力してください」と暗にいっているのと同じだ。
1、冠動脈を輪切りにすると、血管の内部は薄い内膜に覆われ、きれいな中空になっているが、動脈硬化が進むと脂肪の塊とか、カルシウムの沈着とか出血層ができて内腔が徐々に狭くなる。加齢で起こってくるが、最近では油っこいファストフードでかえって子供のコレステロール値が高いという研究結果も発表されている。
1、どんな人に心臓病が起こりやすいかという冠危険因子を挙げる。男性、遺伝的背景、喫煙、高血圧、高コレステロール血症、糖尿病、肥満…。性別、遺伝は持って生まれたものであるが、喫煙以下はコントロール可能であり、生活習慣病と呼ぱれるゆえんである。冠危険因子は米国ボストン市郊外フラミンガムで行われた疫学的研究から分かってきた。日本で例が少ない疫学研究だが、飯村副理事長はじめ札幌医大が道内で20年前から取り組んでおり、九州にもある。いずれも貴重な研究だ。
1、し好品のお酒は全くやめてしまうより、1日にアルコール分を約30グラムとる人が最も死亡が少ない。日本酒なら1合、ビール大ビン1本、ウイスキーならダブル1杯といったところだ。たばこは1日20本以上吸えば、全く吸わない人の2〜2.5倍の死亡率となる。それだけの危険を承知で吸うか、危険率が高いからやめるか、生き方の問題だ。年齢がいくつになっても、やめる方が体にはよい。
1、心構えとの関係に触れる。
(1)一度にたくさんのことをやろうと思う人
(2)断えず動いていないと安心できない人
(3)すぐにイライラする人
(4)早口でしゃべり急いで食事をする人などの攻撃的な性格や完ぺき主義が心臓病を呼び込みやすい。規則正しい生活をして睡眠は十分に、食事はゆっくりとり仕事は余裕をもって、やりがいのあるように工夫するほか、ストレスを感じないようにする。危険因子は少なく抑えないといけない。特に高血圧、喫煙、高脂血症、それに耐糖能異常(糖尿病予備軍)の四つが重なると、全くない人の30倍も心臓病になりやすい。速やかに脱しないといけない。自己チェックして快適な日常生活を送っていただきたい。