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NO.4

動物使って研究盛ん
細胞分化の過程明らかに

(2−1)



北大医学部付属病院 循環器内科
岡本 洋



遺伝子とは何でしょう?また病気とのかかわりは?
  遺伝子と呼ばれるものは、あらゆる細胞、生物が持っているもので、デオキシリボ核酸(DNA=ディーエヌエー)と同じものです。DNAは2本の鎖がラセン状になっていますが、親から子へ遺伝情報が伝えられる時には、2本の鎖が解離し、それぞれに相補的な鎖ができ2組の2本鎖DNAとなります。

 こうしてDNAは複製によって次の世代へと遺伝情報を伝えますが、一方、転写という化学過程を経てアミノ酸をつなげタンパク質を作り出すのです。私たちの体はタンパク質、脂肪、炭水化物などからできていますが、これらすべての物質は遺伝子によって、その産生や分解が調節され、細胞が生まれ変わったり、不要な細胞が壊されたりしているのです。

 多くの病気の成り立ちは、さまざまなタンパク質を作る前の段階、すなわちDNAからタンパク質が作られる過程のどこかに異常があり、タンパク質が多く作られたり、少なく作られたり、あるいは機能のおかしなタンパク質が作られたりして起きてくると考えられています。

 例えば高血圧は遺伝が強く働いている病気で、両親が高血圧であれば子供の半分以上は高血圧になります。遺伝的に親から受け継いだ体質を基にして、塩分の多い食べ物やストレスの強い生活環境が加わり、高血圧になります。親から受け継いだ体質というのが遺伝子の違いなのです。

遺伝子治療とは?

 根本的に病気をなおすためには、どの病気がどのDNAの異常と関係しているかを知ることが、とても重大なことです。高血圧では、いったん血圧が高くなった人は血圧を正常に戻すことが難しく、減塩食や減量はもちろんですが、血圧を下げるため薬を長期間にわたって飲まなければならない場合もしばしばです。

 この場合、薬を飲むのをやめてしまうと、また血圧が高くなる場合がほとんどです。つまり、根本的に病気をなおす薬はないのが実状です。

 そこで、血圧を上げる遺伝子が分かり、どの部分が病気を引き起こすのか確認された場合には、その遺伝子を正常化したり、あるいは早期に異常を見つけ出し病気になる前になおすことが根本的な解決につながると考えるのが遺伝子治療が望まれる理由です。

 昨年、五歳のアデノシンデアミナーゼ(ADA)欠損症の子供さんに日本で初めて遺伝子治療が行われたことは記憶に新しいことと思われます。この病気はアデノシンデアミナーゼ(ADA)という酵素が生まれつき欠損し、リンパ球が傷害を受けやすく、子供のときに致命的な感染症を引き起こす重篤な病気です。そのため、患者さんの異常なリンパ球をいったん体の外に取り出し、正常なADA遺伝子を導入したあと体に戻す方法が取られ、成功を収めています。


表 これまでに試みられた主な遺伝子治療の対象疾患と導入遺伝子
疾 患 遺伝子ベクター、導入法 標的細胞
アデノシンデアミナーゼ
(ADA)欠損症
ADA レトロウイルス T細胞
造血幹細胞
嚢胞線維症 CFTR アデノウイルス
DNA-リポソーム
鼻粘膜細胞
鼻粘膜細胞
家族性高コレステロール
血症
LDL-R レトロウイルス 肝細胞
悪性腫瘍 HLA-B7DNA-リボソーム
IL-2 レトロウイルス
IL-4 レトロウイルス
腫瘍細胞
神経芽細胞腫 
線維芽細胞


  
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