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インターネット 非常時にこそ役立つ/医療に欠かせぬ存在
札幌医大解剖学第一講座 教授 辰巳治之
(北海道地域ネットワーク協議会代表)
情報の塊である医学にとって、また、情報が命にもっとも影響を与える医療にとってインターネットは福音となるであろう。しかし、インフラストラクチャーとして のインターネットは一種の環境のようなもので、あってもどういうことはない、研究機関や医療機関では整備されていて当たり前の環境である。
時々、誤解があり、インターネットに接続すれば、なにか画期的なことがすぐでき る、奇跡が起き人生が変わるように錯覚されているようなところもある。ただ、そのぐらい強調しないと予算獲得、インターネット接続が出来ないので、誤解が生じるのかも知れない。
インターネット・カフェでのぞき見したり、プロバイダーにちよっと接続しただけでは、インフラとしてのインターネットの重要性は理解され難く、また期待が大き過ぎ表面的な使い方だけだと、逆に「あんなもの騒ぐほどの大したものじゃない」となる。
水や空気と同じで無くなったら大変
太い専用回線でインターネットにつながりっぱなしで、いったん電話と同じように 日常の生活に入り込んでしまうと、もう無くては生きていけない。これは、環境汚染のないときの水や空気の大切さのようなものである。汚染されて初めてきれいな水や空気の大切さが身にしみて分かり、お金を出して「六甲の水」や「京極の水」を買うようになる。
病原大腸菌O−157のように感染が一気に広がると大騒ぎになり、その関連の情報が飛び交い、インターネットのような情報網が急に役に立つ。各大学や研究施設で競い合うようにして、役立つ情報を提供してくれる。インターネットがあれば、このように気軽に情報提供ができ、情報収集もできる。いざその時になってインターネットがなければ大変である。また、情報提供した施設だけが評価され、そのインフラを支えていたところは、 なかなか評価されにくい。
文部省も大蔵省を説得し、日本の学術ネットワークのバックボーンであるSINETを敷設してくれた裏には、きっと大蔵省から目に見える成果を、始終、問われていたことだろう。
O-157の情報がインターネットでこれだけ流通したのも、札幌医科大学のLAMeN(Local Area Medical Network、http://web.sapmed.ac.jp/)serverでいち早く、大阪大学のO-157WWW serverのmirrorを立ち上げられたのもSINETのインフラがあったおかげである。ここに評価されにくいインフラ整備をしてくれた文部省学術情報センターに感謝したい。
インフラの大切さが実感されるのは、何かあったときである。本州とつながっている唯一の生命線であるSINETが切れたときは北海道は孤立する。
北海道に科技庁の省際ネット誘致を
そこで、Fail Safeを兼ねて科学技術庁が開始した省際ネットワーク(IMnet)を北海道に誘致すべく努力し、北海道庁関係各部署の人々と科学技術庁のヒアリングまでこぎつけた。しかし、科学技術庁と大蔵省との折衝の段階で実現の見通しが断たれた。 もう一度このインフラストラクチャーの重要性を叫び、復活折衝を切望するとともに、 一人でも多くの人に環境としての情報インフラの重要性を理解してもらい活用してもらうことを期待する。

