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NO.6 |
閉塞性動脈硬化症
(2−2)
*軽度・中等度は薬物と運動療法
写真3:経皮的血管形成術とバイパス手術=出典:「テルミさんの生活習慣病講座 ASOをもっと知ろう」(C)日経BP社2002監修:松尾 汎(松尾循環器科クリニック)
次に治療ですが、先述のFontaine T、U度の軽度から中等度のASOは、たいてい薬物と運動療法で治療できます。薬剤には大きく分けて二種類あり、狭くなった血管を拡げる血管拡張剤と、血小板の働きを弱めて血をさらさらさせる抗血小板剤があり、患者さんの状態に応じ使い分けます(もちろん同時に投与することもあります)。Fontaine U度の間歇性跛行患者さんに運動療法だけ施した場合、半年後に歩行距離が1.5倍に増え、さらに薬物療法により1.8倍まで増えたという報告もあります。
間歇性跛行患者さんでも、比較的若年で活動性が高く、薬物と運動療法でも社会的活動が制限される場合には侵襲的治療が選択されます。もちろんFontaine V、W度の重症虚血肢では可能な限り侵襲的治療を行います。これにはおおきく分けて二通りあり、経皮的血管形成術とバイパス手術が挙げられます(写真3)。病変が比較的限局した軽症例では前者が選択されることが多いです。すなわち、太もものつけねの大腿動脈から管(カテーテル)を病変部位まで進めて行き、風船で血管を拡げ、必要であれば再狭窄予防のため金属の筒(ステント)を留置するという治療です。患者さんの負担は非常に軽く、局所麻酔で行うことができ、入院期間も短期間で済みます。
カテーテル治療が不可能な広範囲にわたる重症例ではバイパス手術を施行します。すなわち、動脈の狭い部分より中枢から末梢にバイパスを置き、末梢の血流を増やす手術です。バイパスには患者さん御自身の静脈や人工血管が用いられます。最近は人工血管の性能も向上してきたため、膝より上までのバイパスには好んで用いられています。膝より下までバイパスを要する場合、人工血管は膝での屈曲に弱く、将来詰まってしまう確率が高く、静脈が使用されることがほとんどです。さらにくるぶしまで病変が及んだ場合でも、薬剤抵抗性の重症虚血肢であれば、もしバイパスをつなぐのに十分な太さの血管があるなら積極的にバイパスをする意義は十分あります。それも不可能な場合、現在北大を含めた全国の病院で遺伝子治療の臨床研究が進行中であり、将来一般的な治療として確立する可能性が十分あります。
*結局は命にかかわる病気
最後にASOの治療の重要性ですが、ASOにかかっている人は、同年代のASOでない人より寿命が短い結果が出ています。海外では比較的軽症の間歇性跛行患者さんですら、その30%は5年以内に死亡するというショッキングなデータも報告されています。それは、ASOは動脈硬化によって起こるため、手足以外の別の場所にも動脈硬化によって病気が起こることがあるからです。62歳を越えたASO患者さんの15−22%に心臓の病気(狭心症など)を、7−13%に脳血管障害を合併しているといわれています。実際、ASO患者さんの死因の実に40%以上は心血管イベントによるものです。従って動脈硬化は、まさに現代人の敵ともいえる病気であり、動脈硬化を予防し、進行を止めるには、生活習慣の改善、早期発見・早期治療が肝要です。
動脈硬化は(1)偏った食事 (2)運動不足 (3)喫煙など、健康によくない生活習慣が引き金となって起こる病気ですので、(1)塩分・脂肪分・糖分・カロリーは控えめに (2)適度な運動を心掛け、手足の清潔・保温・安全に気を配り (3)喫煙、過度の飲酒を慎み、ストレスがかからないように心掛けましょう。アルコールそのものは血管拡張作用があり、間歇性跛行のむしろ予防因子とされていますが、あくまで適量での話です。忘年会シーズン真っ盛りですが、動脈硬化が心配な御仁はくれぐれもほどほどに…。

