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NO.5 |
大動脈瘤
(2−2)
手術
(1)人工血管置換術(写真1、2)
写真1 開胸した後、大動脈瘤を露出しています 写真2 人工血管で置き換えたところです 人工血管置換術とは、開胸もしくは開腹して、拡大した大動脈を人工血管で置き換えるという治療です。今のところ一般的な外科治療となっており、人工血管は生涯そのまま大動脈の一部になります。最近ではほぼ安全に手術が行われておりますが、病気の程度によっては人工心肺装置を用いたり、低体温下に手術を施行するなど侵襲の大きな手術となることもあります。
(2)ステントグラフト内挿術 (写真3,4)
写真3 人工血管の内側に、折り畳むことが可能な金属(ステント)が装着されています 写真4 ステントグラフトが内挿されているところで、左側に認められている大動脈瘤が右側では写らなくなっています 数年前から臨床的に実践されてきている方法です。一般的には大腿部の動脈を切開して、ここから折り畳んだ人工血管を挿入して瘤の部分で拡げるのですが、この人工血管の内側には特殊な金属製の装置(ステント)が付いていて、折り畳み傘が開くように人工血管を大動脈壁に内側から押しつけます。これにより大動脈瘤内には圧がかからないような形になり、瘤の破裂を防ぎます。ここ数年普及してきている非常に新しい治療法です。
大動脈解離
大動脈における特殊な病気の一つに大動脈解離というものがあり、大変重篤な疾患です。何とか急性期を乗り越えても、解離性大動脈瘤という病気に発展することがあります。大動脈解離とは、大動脈壁の弱い部分に圧ストレスがかかり血管が裂けてしまうもので、破綻部位に相当する部分に激烈な痛みと苦しみの感覚が生じます。大動脈破裂の危険が非常に高く、早期に適切な治療が施されない場合は80%以上の方が死にいたる大変危険な病気です。病気の程度にもよりますが、前述の大動脈瘤の話と同様の治療が必要となります。
最後に
大動脈瘤は、万が一破裂した場合は一瞬にして死にいたる非常に恐ろしい病気です。また、血管の病気であることから他の全身の動脈(心臓、脳、腎臓など)にも様々な病気を合併している可能性があり、早期診断・早期治療が大変重要になります。健康診断などで大動脈瘤が疑われた場合は、元気なうちに専門医(心臓血管外科や循環器科)を受診されることをお勧めいたします。

