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NO.21

静脈血栓塞栓症に対する抗凝固療法
:最近の考え方

(1/2)

手稲渓仁会病院 循環器内科 主任部長
湯田 聡 氏


はじめに

 肺血栓塞栓症(pulmonary thromboembolism; PTE)と深部静脈血栓症(deep vein thrombosis; DVT)は、一連の病態と考えられており、静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism; VTE)と総称されています。
 PTEは、深部静脈にできた血栓が肺動脈に詰まる致死的な病態で、急性PTEと慢性PTEに分けられます。急性PTEは新鮮血栓が塞栓として肺動脈を閉塞する病態、慢性PTEは器質化した血栓により肺動脈が狭窄、閉塞している病態を言います。急性PTEの塞栓源の大部分は、下肢や骨盤内の静脈にできた血栓とされ、肺動脈を閉塞する血栓の量や患者の心肺予備能によっては、血圧が低下し、心肺停止をきたす場合があります。
 DVTは、深部静脈に血栓ができた病態で、その多くは下肢に認め、左側の発症が右側に比べ多いとされます。膝窩静脈から中枢側に血栓がある近位型(図1)と、血栓が膝窩静脈より末梢側にとどまっている遠位型に分類されます。DVTの多くは下腿にある、ひらめ静脈からできるとされています(図1)。

図1 深部静脈血栓症の下肢静脈エコー(A)と模式図(B)

静脈血栓は、なぜできるのか?

 その原因としては、血流の停滞、血液の凝固亢進、血管の内皮障害、の3つが考えられています(表1)。
 代表的な例として、長時間の旅行で形成されることが知られています(以前は“エコノミークラス症候群”と呼ばれていました)が、表1から分かる様に、静脈血栓は様々なことが原因でできることがわかっています。近年VTEと悪性腫瘍(がん)との関連が注目されており(表1)、VTEに遭遇した場合、背景に“がん”が隠れている可能性を考えて、大腸や肺など全身の精査を行うことが必要となっています。

表1 静脈血栓塞栓症(VTE)のおもな原因

VTEは、どのように診断するのか?

 PTEは非特異的な症状を示すことが多く、“PTEかも”と疑うことが、その診断にとても大事です。特に手術後、安静解除後の最初の歩行時や排便時、体位変換時に、突然呼吸困難や胸痛、血圧低下を認めた場合、PTEを強く疑います。まずは心エコー図検査で右室の拡大や壁運動低下の有無を確認します。さらに造影CTを行い、肺動脈内に血栓がないか評価します(図2)。
 一方、DVTは下肢のむくみや痛み(特に片側性)をきっかけに病院を受診し、採血のDダイマー上昇からDVTが疑われ、下肢静脈エコー(図1)や造影CTにて診断されることが多いです。

図2 肺血栓塞栓症の造影CT


  
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