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健康講座「動脈硬化はどうすれば分かるか」
「動脈硬化を推定できる内科的検査はあるか」
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日本人の子供は相当ハイレベル
アメリカから日本人の子供のコレステロール値を調べに来たことがありますが、日本人の子供はもう既に高い、下手をするとアメリカの高校生よりも高くて参考にならない、ということで調査を止めてしまいました。皆さんのお孫さんたち、あるいはお子さんたちでも危ないかもしれません。将来、看てくれないかもしれないので子供に期待してはだめですよ。いわゆるジャンクフードと言われているハンバーガーなどが好きで食べてしまう。給食も今、子供の好きなものばかり出しています。あれは将来、必ず動脈硬化を起こしやすいような食事です。
心筋梗塞や狭心症がある方はコレステロールを下げましょう、と言われています。何の危険因子もない方は240位でもいいのですが、危険因子が増えるに従って、もう少し下のほうに下げていったほうがいいです。それから、喫煙です。若い時から喫煙していると因子としては大きいですね。70代までいくと因子としては大分小さくなります。ただ、他のいろいろながんの要因になりますので、喫煙は止めたほうがいいです。
HDLコレステロール値をご存知ですか
HDLコレステロール。コレステロールの中にも善玉と言われる良いコレステロールがあります。これが高い人ほど動脈硬化が少ないので、一度こういうのもチェックしてみてください。あまり高過ぎてもだめです。これが100以上ある方はコレステロールの働きが悪いので、高過ぎてもだめです。100以下位であればいいです。
それから、血圧。血圧が動脈硬化に関連するのは収縮血圧です。上の血圧150以上をそのままにしておくと動脈硬化になりやすいと言われていますので、大体、今は130台から120台を目標に通常はチェックしています。ただ、脳の動脈硬化が非常に強い方は急に血圧を下げるとふらつきますから、下がり過ぎないようにゆっくりやらなければいけません。また、病院に行くと血圧が相当上がる方がいます。白衣性の高血圧といって、通常の20%位高くなってしまいます。病院で血圧が高いものですから、降圧剤がたくさん出ます。それで、家に帰るとふらふらになってしまいます。具合が悪くなると体が反応し、血圧を上げようというホルモンが出るので、血圧を測ると高い、という構図になってしまいます。あまり下げ過ぎないように、主治医の先生と相談することも大切です。
総合点をつけて10年間で点数が高いと、25点は3割以上ですが、起こる確率が上がると言われています。ちなみに私の父親は本当に何にもなくて年齢だけです。この辺で1%か2%ですので、87歳ですがまだだいぶ長生きします。
危険因子を減らして対抗
動脈硬化は、歳をとると必ずある程度起こるし、予防もできませんし、このような動脈硬化が原因で脳梗塞や心筋梗塞を起こすこともあります。どんなに気をつけていてもそういうものが起こることはあり得ます。しかし、最近重要なのは、加齢に伴う動脈硬化ではなく欧米型の、つまり、いいものを食べた結果の動脈硬化です。これは爆弾みたいなもので、ある時突然爆発します。その治療は、今のところ、何時破裂するかわかりませんので予防以外にはないのです。そのためには、今お話した危険因子を少なくすることです。たばこを止める、コレステロールを下げる、血圧を下げるという地道な努力以外、今のところあまりいい手はありません。ただ、いろいろな治療法が出ています。心筋梗塞になってもすぐ治療して良くなるような方法も出てきましたし、遺伝子治療も少しずつ出てきました。動脈瘤になって循環器外科に来ていただくと治療をしてくれる。それぞれの治療法は発達してきていますので、そこで直ぐに治療してもらうということが重要だと思います。
塩分で血圧を維持
血圧は先程申し上げた通り、塩分が一番重要です。人間は海から上がってきた生物の子孫です。海には塩分がいっぱいありますが、陸に上がると少なくなるので、我々の体は塩を溜め込み、海と同じ環境を作るようにできています。普通、キリンのような草食動物は0.2g位しか塩を摂りませんが、あの高い頭まで血を持ち上げるために、実は元々、高血圧になっています。鹿も0.2g位しか塩を食べませんが、何故、低血圧で倒れないのでしょうか。倒れないシステム、つまり血圧を維持するシステムが出来上がっているからです。それで足りない時は、土場という塩が出ている所をなめて補給しているのです。肉食動物は肉を食べる時に血を飲みます。血液の中にたくさん塩が入っているので、それで血圧を維持しているのです。北極圏にいるエスキモーも、昔は生肉を食べ、血を飲んでいました。あれだけ食糧に恵まれない環境でも、そうして血圧を維持していたのです。我々は、広く、そういうものの子孫なのです。
血圧は高くなるようになっている
何故、血圧を維持するシステムが大事かと言うと、我々は飲み食いができなくなったり、怪我をして血が流れたりすると、体の中の水分が無くなってきます。そうなると、血圧は直ぐ下がってしまい、下がると死んでしまいます。ですから、死なないようにするために、血圧を維持するシステムが非常に発達し、そうして生き残ってきたわけです。このような種の末裔だから、我々は血圧が高くなるようになっているのです。
一番いい例がアメリカの黒人です。アフリカで捕まえられ、暗い船倉に大勢押し込められ、食べ物は与えられず、屎尿も流しっ放しで海を渡って連れてこられました。途中で随分死にました。このような状況で生き残ったのは、どういう人たちだったのでしょうか。劣悪な条件下でも血圧を維持できた高血圧の因子を持っている人たちです。アメリカの黒人はものすごい高血圧です。それから糖尿病が多い。少ない糖分で効率的に動くことができるのが糖尿病の体質、つまり、飢えた時に生き残るために必要な遺伝子です。それがアメリカの黒人に多いのです。
先祖が生き残った証、そして我々は…
我々は血圧が高くなるようになっています。塩分を控えないとやがて高くなるし、栄養を控えないと太るようになっています。我々の先祖が生き残った証として、糖尿病になりやすい遺伝子を持っていますので、私たちには気をつけていくしか手がないのかな、と思います。<質問>総コレステロールからHDLを引いたのがLDLと考えていいのか。
<村上先生>
正確には少し違います。計算式としては総コレステロール値からHDLを引き、更に中性脂肪値を0.2倍した値を引くのが使われていますが、実際に計ったのはちょっと違います。今はLDLを直接計れるようになっていますので、そちらのほうで正確な値がでます。HDLは大体どこの施設でも出しています。LDLは出している施設と出していない施設があります。お金が余分にかかりますが、LDLコレステロールが知りたいと言えば、どこの施設でも計れます。