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NO.27

「あなたの健康を守る特別講座」
「動脈硬化のふたつの形―拡張病変と狭窄病変―に対する診断と治療」
(3/3)



ほとんど症状がない動脈瘤

 次は動脈瘤―拡張病変の話に移ります。これはASOに比べたら患者さんの数は少ないのですが、もしなった場合は、ASOより病気そのものが命に関わることがあるので、知っておいたほうがいいと思います。動脈瘤の怖いところは、ほとんどの方が、症状がないということです。あったとしても、胸部の場合は声が嗄れるとか、むせるかです。要するに声帯が麻痺してこのような症状が出ます。最初分からなくて耳鼻科に行って、それから私どもの所に来る。左の背中が痛かったり肩が痛かったり、瘤による圧迫で痛くなって、整形に行ってこちらに紹介されて来るという方もいます。腹部になるとほとんど症状がなく、胸部以上に症状がなくて、ちょっとお腹を押したら「どっくん、どっくん」するというので診たら大きな瘤があったというようなことがほとんどです。

手術の8割は腹部大動脈

 瘤の治療は、瘤の大きさに応じて破裂を予防する治療になります。でも、痛みが出たらもうそれは遅いので、痛みが出たら直ぐ近くの病院に行っていただきたいと思います。どれくらいあるかというと、これも日本ではきちんとしたデータがなくて、2000年に全国の病院でまとめたところ、大体6,000件の胸部大動脈瘤手術がありました。これを見たらわかる通り、胸部は全体に比べたら5%〜10%で、実は8割がお腹です。ですから、お腹を含めたらこれの4、5倍で約30,000人の患者さんが日本全国で一年間に手術を受けていることになります。

 先程言いましたように、この瘤はASOよりも更に怖いです。もし何も治療をしないとすると、この胸部大動脈瘤では10年の間に7割位の患者さんが亡くなって、腹部にいたっては8年の段階で1割の人しか生きていないことになります。これはあまりにもショッキングなデータだと思います。どうしたらいいか。瘤が小さくて無症状の場合は、血圧を下げる薬を飲んで、とにかく破れないように注意する。あまり大きくならないように注意してCTで経過観測をする。大きなもので症状もある患者さんには、やはり手術になりますが、ここでもごく最近の話ですが、技術の進歩によって手術しなくてもカテーテルだけで直る方法もあります。

左肩と背中が痛くて整形外科に

 いくつか症例を紹介します。50歳の女性です。何となく飲み込みづらいというので最初、消化器内科でカメラを飲んで細いと言われ、バリウム造影をしたらこんなに食道が細くなっていました。圧迫されているのですね。慌ててCTを撮ってみたら、このように大きい瘤がありました。普通の大きさの3倍くらいの瘤がこの段階で初めて見つかりました。血管造影やMRIをするとこんなに大きな瘤が見つかりました。この患者さんはまずこちらのほうを治療して、次に脇腹のほうをして、下のお腹のほうも治療しました。最初、飲み込みづらいだけの症状が、実はこんなに大きな瘤があったという例です。

 次の方は、最初、左肩と背中が痛くて整形外科を受診、胸部写真を撮って変だなということでCTを撮ったら、大きい瘤がありました。実は、この患者さんはもう破裂していました。ここに黒く見えるのが血で、破裂して慌てて私どもの科に移って緊急手術をして助かりました。

 この方は左肩が痛い、声が嗄れるということで耳鼻科を受診し、こちらに紹介されたので胸部写真を撮ってみると、大きな瘤があってびっくりしました。胸部写真だけでもわかるのです。それでCTを撮ったらこんなに大きなもので、背骨を圧迫しているので左の肩に痛みがあったのです。実はここに声帯を司る神経があり、これの圧迫で声が嗄れるという症状が出ていたのです。

たまたま健診で大きな瘤が見つかる

 この方は78歳の男性で、たまたま健診でCTを撮ったら下行大動脈にこんなに大きな瘤が見つかりました。全く無症状でした。この患者さんは肺の方もすごく悪かったので、先程申しましたステント治療をしました。太ももの付け根に小さな穴を開けるだけで、金属の管の中で縮めてあったものをここでぱっと離すと広がるという道具があって、このステントを入れると瘤が見事になくなるといった治療です。最近発達したばかりですので、まだまだこれから進歩していかなければならないものです。

 これがもうびっくりしてしまうのですが、90歳のおじいちゃんで、こちらに見えた時には赤ちゃんでも身ごもっているのではないか、と思うようなお腹に13cmの瘤がありました。こんなに大きな瘤があるのに、症状は食欲不振だけでした。人工血管で置換しました。

 ご紹介した例でおわかりでしょう。ご自分からは言い難いかも知れませんが、心配だと思ったら健康ドックのつもりでCT検査を一回受けてみたらどうかと思います。

手術の目安は5cm

 お腹の瘤について、もう少し詳しくお話します。何cm位になったら手術をするのか。3.5cm以下では、ほとんど8年経っても亡くなる方はいません。5cm以下でも同じです。5cmを超えた途端に死亡率が上がりますので、5cmが境目ではないかと言われています。破裂頻度も5cmを超えると多くなっています。ですから、症状がない方でも5cm以上は対象になります。ただ、お年を召して他にも心臓が悪いとか脳梗塞もしているとか、リスクの高い方は6cmまでは、原則、手術はしません。痛むとかの症状がある方はこの限りではありません。

 もし破裂してしまうと、おおよそ半数の方が、病院に着く前に亡くなってしまいます。動脈ですから、破裂したらすごい勢いで血が出ます。運良く病院までたどり着いても、手術をして助かる可能性は半々です。一旦、破裂してしまうと、助かる方は1/4になってしまいます。手術の死亡率は病院によっても違いますが、いい所で1%、悪くても5%以下と、最近は技術も発達して成績も良くなっていますので、もしもこういった瘤が見つかったら、きちんと毎年CTを撮って、ある程度の大きさになったら破裂する前に手術することをお勧めします。今の治療方針はこういうふうになっています。

<質問>脈で分かるとおっしゃっていましたが、どのように分かるのでしょうか?

<国原先生>
脈が触れないとか、弱いとか、左右差があるとかで分かるということです。なかなか始めての方ですとなかなか難しくて、脈があるのに分からないということもあるかもしれないです。


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