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「退職後の健康管理について」
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小樽市保健所・主幹 秋野 恵美子
効能は8つ、さあ、とにかく始めましょう
5.運動の事
どんな運動をしたらいいのか?北海道心臓協会の機関誌「すこやかハート」80号に西島先生が書かれています。結論はどんな運動でも構わない、30分まとめて出来なければ10分×3でもいい、とにかくやる、ということです。ただし、狭心症の発作が起きるほどきつい運動をいきなりではなく、徐々に体に合わせて増やしていってください。
以下、運動の効能です。@高血圧症⇒改善、予防A高脂血症⇒予防、治療B糖尿病⇒予防、治療C高尿酸血症(男性・アルコールを飲む・運動不足、は要注意)⇒予防、治療D高インスリン血症⇒治療E骨粗鬆症⇒カルシウムを摂ればいいわけではありません。カルシウムは、日々、骨の中に出入りしています。骨は鉄パイプのようなものではなく、カルシウムを取り込んだり出したり濃度調整をしています。どんな方でも、動かなくなってしまうと骨からカルシウムが尿中に出てしまいます。体を動かしているかいないかで骨の代謝が変わります。運動しなければ骨は丈夫になりませんFストレス対策⇒ストレスとは嫌なこと。動物にとって一番嫌なことは動かないことです。逆に言えば、動けば体のストレスが逃げます。体のストレスが逃げると心のストレスもほぐれます。ストレス対策で一番有効なのは運動です。ストレッチやエアロビクスでなくても、その時々ちょっと足踏みする、腕を伸ばすようなことで構いませんG若さ⇒運動をしている方は若い。若くありたいと思う方は、是非、早目に運動を。
精神力だけで勝てる相手ではありません
6.タバコの事
21世紀の禁煙方法をお話します。これまでは「禁煙は精神力」のイメージでしたが、今はニコレットとかニコチンパッチとかニコチン製剤を使います。ニコチンにはニコチンです。素手でかなう相手ではありません。禁煙外来を開いている病院はまだ少ないですが、有名なのは奈良県の大和高田市立病院(現在は京大病院予防医療クリニックにて禁煙外来を開設)です。高橋裕子先生はニコチンパッチやインターネットを利用した長期支援などを使うことで7割以上禁煙は出来るといいます。ただし「禁煙は一日にしてならず」です。きょうから止めようと思って出来る方は少ない。止めようと思って失敗する。また、止めようと思って失敗する。だんだん止め方が上手になって最後には成功する。諦めさえしなければ、そして素手でさえなければ禁煙は出来ます、とおっしゃっていました。
ニコレットはニコチン入りのガム、ニコチンパッチは皮膚にニコチンの入ったパッチを張り付けて吸収させるものでガムよりも効果的です。最近は皮膚に張り付けて吸収させる薬が増えています。女性ホルモン、フランドールという狭心症の薬もそうです。喫煙者がたばこを吸うからくりは…タバコを吸う→体内のニコチン濃度が高まる→落ち着く→時間が経ちニコチンが切れてくる→不快になる。不快感解消にまたたばこを吸って、ニコチン濃度を上げる…のくりかえし。ニコチンパッチを張ると体内のニコチン濃度は一定値を保ち、ニコチン切れの不快感がなくなります。その代わり吸った時の快感もありません。忙しさに紛れてたばこを吸うのを忘れ、気がついたら結構長い時間吸っていない状況です。ガムはたばことニコチンパッチの中間で、噛んでもたばこほどの愉快感はなく、切れると結構不快感があり、タバコほどではないが快、不快の山と谷ができます。それならいっそたばこ、ということで、ガムで禁煙はうまくいかない方もいるようです。
時にはライフスタイルを切り替えることも必要
7.A型性格
血液型でありません。アグレッシブ(Agressive)のAで、心筋梗塞になりやすい性格といわれます。人と競争するのが好きで良い点数を取らないと気が済まない、何事もスピーディーに早く終わらないと気が済まない。このようにせっかちで、仕事、仕事の気短人間をA型性格といいます。生活そのものがA型なので食事も早いし、「余暇?そんな時間があるなら仕事だ!」と自分の体を痛めつけます。意外にも健康管理に性格が関与していました。人様のために良かれと思って一生懸命仕事をしてきたライフスタイルを切り替え、B型(のんびり型)、ゆったりしたペースで暮らすことも健康に役立つということです。
未使用の脳細胞をせっせと使いましょう
8.脳の事
脳細胞は20歳がピークで、以後毎日約10万個減るそうです。欠落した脳細胞は元に戻りません。40歳を過ぎると物忘れが始まり、人の顔を見ても名前が出てこない、昨日見たテレビが「ホラ」「アノ」になる。覚えたはずの脳細胞が欠落するから記憶が無くなるのでしょう。そうなったら別の細胞に再度覚えさせればいいのです。脳細胞は、本来120億個はあるといわれています。60年間毎日10万個減ったとしても、22億個ぐらい減る程度です。まだまだ未使用部分があります。そこに新たに覚えさせることが大切です。今まで何十年もいろいろなことを経験してきたから覚えているはずと構えていると、ある時、欠落している自分と対面することになります。
蓄えてきた知識が減ったとみなし、使っていない脳細胞に知識を蓄え直す。昔から「60の手習い」といいます。いくつになっても新しいことを学ぶ、わかっていることでももう一度謙虚に学び直すという姿勢があると、「ホラ」「アノ」はなくなります。脳細胞が減ると聞くと皆さんがっくりしますが、減る以上にたくさん残っていますので、日々、新しい知識を柔軟な姿勢で取り入れていくようにいたしましょう。今までやってこられなかったこともこの際始めてみようか!新しいことに取り組む姿勢が必要な時代なのかと思います。
9.自分の体は自分が一番わかる・・・本当に?
今の医学は採血しなければわからない。採血せずして体はわかりません。年に一回必ず健診で採血し、ご自分の体を把握してください。
その時、その人が、精一杯、生き切ること
10.「健康とは?」
WHO流健康の定義は「身体的にも精神的にも社会的にも完全に良好な状態をいい、単に疾患にかかっていないとか虚弱でないということではない」となり、病気でないだけでは不十分です。身体的に精神的にかつ社会的に完全に良好な状態が健康、と厳しい定義です。むちゃですが、ここから、健康の三つの側面、体だけでなく心も社会的にも、という点を考え直すことは重要です。自分の社会をもたなければだめです。家族だけでなく友達をもつとか、あるいは活動の場をもつとかが大事です。
私は日野原重明先生の健康の定義が一番好きです。「その時、その人が、精一杯、生き切ること―これを健康とよぶ」と講演でおっしゃっています。例え、病を得たとしても、癌の床にあったとしても「その時、その人が、精一杯、生きる病人」と、病におしひしがれてしまって「もうダメ」といってしまう人とでは、やっぱり、生き方は違うでしょう。(イラスト・山田 朋枝)


