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NO.23 |
「退職後の健康管理について」
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小樽市保健所・主幹 秋野 恵美子
効能は8つ、さあ、とにかく始めましょう
5.運動の事
どんな運動をしたらいいのか?という点については、北海道心臓協会の機関誌「すこやかハ−ト」の80に西島先生が書かれています。結論から言うと、どんな運動でも構わない、30分まとめて出来なくても、10分×3でも何でもいいから、とにかくやってくださいということです。ただし、狭心症の発作が起きるまできつい運動をいきなりやらないで、徐々に自分の体に合わせて増やしていっていただきたい。
運動の効能を挙げれば、以下の8つになります。
(1) 高血圧症⇒良くなる、予防になる
(2) 高脂血症⇒予防、治療になる
(3) 糖尿病⇒予防、治療になる
(4) 高尿酸血症(男性でアルコ−ルを飲み、運動不足の方は要注意)⇒予防、治療になる
(5) 高インスリン血症⇒治療になる
(6) 骨粗鬆症⇒ただカルシウムを食べていればいいというわけではありません。カルシウムは、日々、私たちの骨の中に入ったり、出たりしています。骨というのは、堅い鉄パイプのようなものではなく、カルシウムを取り込んだり、出したり、カルシウム濃度の調整をしているものです。どんな方でも、動かなくなってしまうと骨からカルシウムが尿中に出てしまいます。例えば、大腿骨の頸部骨折など、いろいろなことで病院に行って横になって寝る状態になると出てきてしまう。体を動かしているか、いないかによって骨の代謝が変わったりします。ただカルシウムを摂るだけでなく、運動をしなければ、骨は丈夫になりません
(7) ストレス対策⇒ストレスとは嫌なこと。心にとって嫌なことも、体にとって嫌なこともあります。私たち人間は動物です。動物にとって1番嫌なことは、動かないでいることです。逆に言うと、動いてやれば体のストレスが逃げていきます。体のストレスが逃げていくと心のストレスもほぐれていきます。ストレス対策で1番有効なのは運動です。まとめて、ストレッチやエアロビクスをするのではなく、その時々に、ちょっと足踏みをする、腕を伸ばすのでもかまわない
(8) 若さ⇒運動をしている方は若い。若くありたい、と思う方は早めから運動をした方がいい
精神力だけで勝てる相手ではありません
6.タバコの事
21世紀の禁煙方法。これまで禁煙というと精神力で止めるというイメ−ジがありましたが、今の禁煙方法は、ニコレットとかニコチンパッチとかニコチン製剤を用います。ニコチンにはニコチンで対応しようということです。素手で立ち向かってかなう相手ではありません。
私たちの回りには、禁煙外来を開いている病院は少ない。1番有名なのは、奈良県の大和高田市立病院です。高橋裕子先生の禁煙外来は大体9割は出来るといいます。9割の意味は、禁煙は1日にしてならずという。きょうから止めようと思ってすぐ出来る方は少ない。止めようと思って失敗する。また、止めようと思って失敗する。だんだん止め方が上手になって、最後には成功する。諦めさえしなければ、そして素手で立ち向かいさえしなければ禁煙は出来ます、とおっしゃっていました。
ニコレットはニコチン入りのガム、ニコチンパッチは皮膚にニコチンの入ったパッチを張り付けて吸収させるもので、ガムよりも効果的です。最近は皮膚に張り付けて、吸収させるという薬がどんどん出てきています。女性ホルモン、フランド−ルという狭心症の薬もそうです。
喫煙者がたばこを吸うと、体内のニコチン濃度が高まり愉快な状態になり、時間が経ちニコチンが切れてくると不快な状態になり、この不快感を取り除くため、また、たばこを吸ってニコチン濃度を急激に上げて愉快な状態になり、ストレスを発散させます。ところが、ニコチンパッチを張り付けると、体内のニコチン濃度はある一定の状態になり、ニコチン切れの嫌な感じがなくなります。その代わり、吸った時の快感もありません。忙しさにまぎれて、たばこを吸うのを忘れていて、気がついたら結構長い時間吸っていない、という状況に近いでしょう。
ガムは、たばことニコチンパッチのちょうど中間で、噛んでもタバコほどの愉快な感じにはならないし、切れると結構不快感があり、タバコほどではないが快、不快の山と谷ができてしまいます。それならいっそたばこ、ということで、ガムで禁煙はうまくいかない方もいるようです。
時にはライフスタイルを切り替えることも必要
7.A型性格
血液型のA型ではありません。アグレッシブ(Agressive)のAに由来しており、心筋梗塞になりやすい性格と言われています。
(1) 人と競争するのがとても好きで、とにかく良い点数をとらなければ気が済まない
(2) 何事もやる時には、スピーディーに早く終わらないと、気が済まない
このように、せっかちで、仕事、仕事で、気が短い人のことを、A型性格といいます。こういう性格の方は、生活そのものがA型なので、食事も早いし、「余暇?そんな時間があるなら仕事だ!」というように、ご自分の体を痛めつけてしまいます。意外にも、健康管理に性格が関与していたということであります。今まで、人様のために良かれと思って一生懸命に仕事をしてきた自分のライフスタイルを切り替えて、B型(のんびり型)、ゆったりしたペースで暮らすことも健康に役立つということになります。
未使用の脳細胞をせっせと使いましょう
8.脳の事
脳細胞は、20歳をピ−クに、毎日約10万個ずつ減っているといわれています。歳をとるほど脳細胞は減っていきます。ところが80歳になっても、まだ、全部は無くなっていません。まだまだ残っています。どんどん減ってはいきますが、80歳になっても100歳になっても、全部は減り尽くさないのです。
落ちた脳細胞は元に戻りません。そうすると40歳を過ぎると物忘れが始まります。人の顔を見ても名前が出てこない。昨日見たテレビの「ホラ」「アノ」が始まってくる。「ホラ」「アノ」の世界は、おそらく覚えたはずの所の脳細胞が欠落してしまうから、記憶が無くなるといえます。
そうなったら、別の細胞にもう1度覚えさせてやればいいのです。私たちの脳は非常に大きいものです。毎日の生活でも使っている面積は、非常に少ないと言われています。まだまだ未使用の部分があるので、そこに新たに覚えさせる。自分は今まで何十年もいろいろなことを経験してきたから覚えているはずだ、と構えていると、ある時、欠落している自分に出会わなければならないことになります。
自分の蓄えた知識が減ったとみなして、もう1回新たに、自分の使っていない脳細胞に知識を蓄え直す。昔から「60の手習い」といいますが、60歳になると相当脳細胞は減っていますが、60歳からスタートしても立派に出来るということは、私たちの脳には、まだまだ使ってない所がどっさりあるということです。いくつになっても、新しいことを学ぶ。もう既にわかっていることであっても、もう1度、謙虚に学び直すという姿勢があると、「ホラ」「アノ」はなくなります。
脳細胞が減ると聞くと、皆さんがっくりしますが、減る以上にたくさん残っていますので、日々、私たちは新しい知識を、柔軟な姿勢で、取り入れていくようにいたしましょう。今までやってこられなかったことも、この際始めてみようか!こういう新しいことに取り組む姿勢が必要な時代なのかと思います。
9.自分の体は自分が一番わかる・・・本当に?
今の医学は、採血をしなければわからない。採血せずして、自分の体はわかりません。年に1回必ず、健診を受けて採血をして、ご自分の体を把握していただきたい。
その時、その人が、精一杯、生き切ること
10.「健康とは?」
健康の定義。WHO(世界保健機構)流に言うと、「身体的にも精神的にも社会的にも完全に良好な状態をいい、単に疾患にかかっていないとか虚弱でないということではない」となり、病気がないというだけではだめなことになります。身体的に精神的にかつ社会的に完全に良好な状態を健康と言う。大変厳しい定義ですが、そんなのは無茶です。ただ、この3つの側面、体だけでなく心の面でも健康、あるいは社会的にも健康なことは重要です。自分の社会をもたなければだめです。家族だけではなく友達をもつとか、あるいは活動の場をもつとか、こういう3つの側面における健康が大事です。これがWHO流の言い方です。
私が1番好きなのは、日野原先生の言い方です。
「その時、その人が、精一杯、生き切ること―これを健康とよぶ」と講演の中でおっしゃっています。例え、病を得たとしても、癌の床にあったとしても、「その時、その人が、精一杯、生きる病人」と、病におしひしがれてしまって「もうダメ」と言ってしまう人とでは、やっぱり、生き方は違うでしょう。

