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NO.17 |
悪い肥満を防ぐための食事療法
(5−1)
北海道大学医学部附属病院栄養管理室長
佐藤 恭子
食事の摂り過ぎは肥満に直結
こんにちは、皆さま。私はBMI22ではなくて、23、4に近いんですが、佐久間先生のお話で、多少太っているほうが女性の場合は良いと聞き、大変安心しました。ほっとしています。私のテーマは「悪い肥満を防ぐための食事療法」です。佐久間先生が悪い肥満について説明されましたので、私はその食事療法についてお話し致します。
皆様のお手元にプリントをお配りしてあります。今、佐久間先生のお話にもありましたように、血液中の脂質が高いと、結果として悪い肥満、動脈硬化とかの障害が出てくるということです。そういうことを防ぐために、先ずは肥満の予防が大切なことになります。
肥満の原因は色々ありますが、中でも、過食、食事の摂り過ぎが肥満に直結します。今は本当に便利な世の中になりまして、体を動かさなくても大体事が足り、テレビの操作はリモコンで、洗濯機は全自動でという具合で、つい運動不足になり、それが肥満に導くということになります。
飽食の時代と言われております。特に今は食欲の秋で、果物にしましても大変美味しいものがたくさんお店にあります。私たち病院の栄養士をしていまして、患者さんに栄養指導する時に、「果物は、例えば、おりんごでしたら小さめの1個が一日の適量ですよ」と、お話しても、女の方は果物が大好きということで、ついつい食べ過ぎてしまいがちです。これから秋になって柿なんか柔らかくなりますと、「もったいない」とたくさん召し上がってしまいます。
それから男の方とは限らないですが、運動不足が問題です。「ちょっと持って来て」と自分は動かないで、色々と用事を奥様に申し付ける。それも運動不足につながって、肥満を招くのではないかなと思います。
コントロールの目標はBMI22
これは先程、佐久間先生にも説明していただきましたけれど、どういった体重が1番良いのかということをお話します。肥満学会が出している数値は、BMI25以上が肥満、30以上は特に肥満で、きょうお見えの方は25以上の方はあまりいらっしゃらないんじゃないかと思うけれども、コントロールの目標をBMI22にしています。これが一番色々な病気を予防できる数値、体格指数となっております。
表2.理想体重の算出方法 身長m×身長m×22=( )kg 例)1.65m×1.65m×22=59.9Kg(理想体重)
(身長1m65cmの場合)成人食1日に必要なエネルギーは? 理想体重Kg×25〜30キロカロリー=必要エネルギー
(活動に必要なカロリー)(1日のカロリー)例) 体重60kg×28キロカロリー=1.680キロカロリー
(理想体重60kgの場合)身長に合わせた理想的な体重の出し方は、皆様のお手元に計算の仕方がわかりやすく書いてありますので、お家に帰りましたらお試しください(表2)。電卓で簡単にできます。体重が70キロある方でしたら、「70÷メートル÷メートル」で計算しますので、1メートル65の場合は、「70÷1.65÷1.65」で、25.7のBMIとなり、この方の場合は多少肥満ということになります。
自分のBMIが出たところで、今度は理想体重を計算しましょう。身長165センチの方は「1.65×1.65×22」です。22は理想の体格指数ですので、22を掛けるんですよね。それで、出たキロ数が59.9、約60キロということになります。皆様、165センチの方は大体60キロ近くあれば、まあ良いかなということです。これはあくまでも理想なんですけども、先程、佐久間先生がお話になったように、痩せていても、と言うか22でも、お臍の周りが大きいと悪い肥満の仕方ということでありますけれど、まあ22でしたらほとんど大丈夫だと思います。
表1 食事で心がけたいこと・一口メモ 1日3食 バランス良く、いろいろな食品を摂りましょう 糖質の多い食品(果物、砂糖、菓子など)の摂りすぎに注意しましょう 野菜類、きのこ、海藻類を摂りましょう EPA,DHAなど多く含む魚介類を摂りましょう 塩分はうす味に心がけましょう アルコール類は、ひかえましょう 食事とともに実行しましょう 運動可の人は、身体を動かしましょう 気持ちを明るく目標に向かう 佐久間先生たちから「1日何kcalのお食事を患者さんに指導して下さい」とオーダーが参ります。このカロリーの出し方は、あくまでも理想体重を基本にします。現在の体重じゃなくて、「理想体重×体重1キロについて必要なカロリー」です。まあ皆さんでしたら28から30kcal位あれば大丈夫だと思いますけれど、糖尿病の方でしたら25から30kcal位を必要とします。体重1キロについて25から30Kcalです。体重60キロの方は「60キロ×28kcal」で1日1680kcalとなります。これが1日のカロリーです、エネルギー量です。
このように1日のエネルギー量を出し、これに沿って、私たちは1日の献立を立てるんですけれど、皆さんはそういうわけにはいかないですよね。いちいちカロリー計算してお食事というのは大変だと思いますので、お手元の資料に目安量を載せておきました。また、どういったお料理がカロリーが高いかとか、何を欠いたらどういうことになるかなど「食事で心がけたい一口メモ」としてまとめてあります(表1)。
1日の必要量を朝昼晩3回で
佐久間先生への質問で、「1日3食だったけれど2食にしました」というのがありましたが、例えば、お相撲さんは太るために1日2食にしており、太りたい時は食事の回数を減らして貯め食いするということです。それから、夜寝る間際にお食事をする。佐久間先生のお話でも、脂肪細胞には夜どんどんエネルギーが入って来て、太ってしまうということです。これは1日の決められたエネルギーを、朝昼晩3回きちんと分けていただくのが一番良くて、さらに、バランス良くお食事をするのが大切と言うことですね。
このバランスが問題でありまして、大変幅が広いので、後程またお話しいたします。
いろいろな食品を摂ることが大切です。「1日30種類の食品を摂りましょう」と皆さんお聞きになったことがあると思いますけれど、たくさんの食品を摂りますと、体に必要な色々な栄養素が含まれていますので、1日3食バランス良く色々な食品を摂りましょうということです。次ぎに、糖質の多い食品。これは思いつきで書いちゃってバラバラですけども、先程も佐久間先生のお話にありましたように、中性脂肪を高くするのは、特に洋菓子はたっぷりバターや卵を使いお砂糖も沢山入っていますから中性脂肪もコレステロールも上げてしまいます、ご飯も食べ過ぎると中性脂肪を多少上げますが、特に果物とか、お砂糖類、お菓子には大抵お砂糖が入っていますよね、そういったお砂糖の入ったもの、コーヒーとかにたっぷりお砂糖入れるとか、そういう方とか、あとはお菓子、和菓子でも洋菓子でも、まあこういったものを好む方の中性脂肪が高くなりやすいのです。
脳外科で動脈瘤の手術をした患者さんに、昨日、栄養指導したんですけれど、その方は最初中性脂肪が820ありました。本当にびっくりするくらい高かったんですけれど、1週間ほどで半分位の400台になり、今週退院されるんですけども、今343、それでも正常な方の倍以上あります。これからお家に帰ってからどういうことに気を付けていただきたいかということをお話しました。
この患者さは餡ものが大変お好きで、よく「パックに6ケ位入ているお饅頭」を買って来るということです。共稼ぎの奥様が帰ってくるまで饅頭を食べていて、奥様はそんなに太りたくないから「饅頭はいりません」と言うと「何だ、もったいない」と全部食べてしまうんだそうです。ケーキでも、とにかく甘いものが好き。そして子供さんが好きそうな脂っこいもの、ハンバーグ、揚げスナック菓子、カツレツ、ピザなどが好んで食べていた44歳の男性で、肥満度も退院時には体重もBMIが32から28に下がりました。不規則な生活だとか、過食、そういったものが原因でエネルギーが多く、中性脂肪を上げた結果と考えます。
お野菜、海草類、キノコ類はあまり好きじゃなかった。共稼ぎの奥様は野菜料理が苦手、野菜料理が好きでない、作れない。その患者さんも野菜料理が好きでないので、結局は奥様も作らないようになり、野菜をほとんど食べていなかったということでした。ですから、また後程お話しますけれど、野菜、キノコ、海草類を毎日、毎食、3食きっちり摂りましょうということです。
今は、本当にサンマが美味しい時期です。これには血液中のコレステロールとか中性脂肪とかを下げてくれるような脂がたっぷり入っています。EPA、DHA、皆様お聞きになったと思いますけれど、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸とかそういったものが。サンマ、鯖、鮭とか色々ありますけれど、これらを摂っていただく。しかし、あまり摂り過ぎると、油の成分は良くてもカロリーが高いので肥満につながってしまいますので、ほどほどにということで、これもまた後程お話します。
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