| No.79 |
「心臓と腎臓を守る暮らし方〜血圧管理で目指す元気な未来〜」
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旭川医科大学内科学講座 循環器・腎臓内科学分野
教授 中川 直樹 氏
今日のテーマ「心臓と腎臓を守る暮らし方」主に高血圧のお話をします。今年改訂されました「高血圧管理治療ガイドライン」では血圧が120oHg/80oHgを超えるような方は、まず生活習慣を見直すと書いています。そして今日皆さんにお伝えしたいことが「高血圧」の10のファクト、高血圧学会でまとめた10の正しい知識です(表1)。
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10のファクトの一つ目が「高血圧は将来の脳卒中、心臓病、腎臓病、認知症の発症リスクを高める病気」です。リスクっていうのは、その病気のなりやすさということを示し、上の血圧が130oHgより低いと脳卒中になりにくく、上の血圧が110〜120oHgより高いと狭心症であるとか、心筋梗塞、そういった病気になりやすく、高血圧の一歩手前の状態、血圧の上が139oHg、下が89oHgでも血管性認知症に2倍くらいなりやすいことが報告されています。
二つ目が「日本では1年間に17万人が高血圧の原因となる病気で死亡」です。その病気「心臓病」「脳卒中」には生活習慣病つまり、高血圧、悪玉コレストロール、糖尿病、喫煙、腎機能障害があるとなりやすいということです。
三つ目が、「日本の血圧コントロール状況は主要経済国の中で最下位レベル」です。日本には高血圧患者が4,300万人おり、そのうち約半分の44%が高血圧の自覚がない、あるいは知っていて治療を受けない。あとの29%は薬を正しく飲まないなど管理が不十分な状態である。
四番目と五番目をまとめて示すと「上の血圧、収縮期血圧を10oHg下げると脳卒中や心臓病が約2割減少します」。「高血圧の人では年齢にかかわらず、上の血圧を130oHg未満、下の血圧を80oHg未満まで下げると、それ以上の血圧に比べて脳卒中や心臓病が少なくなります」。全ての国民は年齢や元の病気にかかわらず130oHg/80oHg未満を目指すことが強調されています。
六番目が「生活習慣の改善で血圧は下がります」(表2、表3)減塩ですね、1日摂取量を5g未満にすると、上の血圧が5oHgぐらい下がる。野菜の多い食事を摂ると6oHgぐらい下がる。体重を減らすと5oHgぐらい下がる。運動も4oHgぐらい下がる。お酒を控えるだけでも3oHgぐらい下がるとかですね。生活習慣の改善を組み合わせる、減塩、塩分を減らして、野菜を増やして、体重を減らすと、組み合わせることでさらに下がるので、まず血圧が高いと指摘されたら、すぐに生活習慣の改善に取り組んでください。
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七番目が「日本人の食塩摂取量は1日10gと世界の中で最も高い」(図1)。札幌市は全国平均の男性10g・女性9g。旭川市は男性が15g・女性が12g。では、実際に塩分をどのようにして取るかというと、たくあん一切れで塩分0.7gぐらい、2切れで1.4g。梅干し1個で1.6gぐらい。のりの佃煮は大さじ1杯で2g。だから毎朝これらをご飯に乗っけて食べていると、これだけで1日の塩分摂取量をほとんど達成してしまいます。さらにラーメン、旭川市民はラーメンの摂取量が多いのか、ラーメン1杯には約5gの塩分があるので、高血圧の方は食べてもいいけどスープは飲み残してください。
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八番目と九番目をまとめると、「目標の血圧レベルに達するために多くの患者さんでは、やはり二つぐらいお薬を飲む必要がある」「血圧を下げる薬は今だいぶ色んなお薬があり、お薬も安く安全で効果があって、副作用よりも血圧を下げる利益の方が大きい」。高血圧の薬は、先生に相談すれば、その方の病気にふさわしい薬を選んでくれるし、副作用など気になる場合には薬を切り替えてもらうこともできます。
10のファクトの最後は、「日本は家庭血圧計が普及しており、家庭での血圧測定は高血圧の診断と治療に役立ちます」。家での正しい血圧の測り方は、左手で測る場合は、両腕の正面ではなく、測定する腕側の肩の正面に置き、上腕の高さが心臓と同じ高さになるように背もたれのある椅子に座って、安静をしっかり取って測ってください。血圧計は腕で測るタイプが良い。測るタイミングは朝と晩に測ること。朝は起床後お手洗いだけ済ませて、朝食前、朝の薬を飲む前、座って1、2分安静にしてから2回測ってください。晩は、寝る前。これも座って1、2分安静にしてから2回測って記録をつけるのが重要です。
いま高血圧学会では「あぶない早朝高血圧」「血圧朝活キャンペーン」というのをやっています。脳卒中になりやすい時間帯っていうのを調べたところ、朝の6時から12時の間で多い。心臓突然死、心臓発作、心筋梗塞もこの時間に多いんです。これは朝起きて動き出して血圧が上がる時間帯に多い。血圧の他にも様々な要素があるが、やはり血圧が上がることに伴って、心血管病が増えると言われています。
最後に「健康長寿を目指すには?」について話します。「健康寿命を延ばそう」というスマート・ライフ・プロジェクトが9月に行われ、6つの項目が挙げられたので紹介します。
@適度な運動。毎日プラス10分の身体活動、例えば通勤時の早歩き、庭いじりや掃除、体を動かしましょう。
A適切な食事。主食、主菜、副菜、バランスよく栄養を取りましょう。
B禁煙。受動喫煙という副流煙を吸う方がより体に悪いという報告もあります。
C良質な睡眠。大谷翔平選手も睡眠を大事にしているということですが、睡眠は心身の健康のために重要です。
D健診。がん検診等も含め、がん検診にしても症状が出てからは手遅れになることが多いので、元気な時に元気な状態を確認する。定期的に自分を知るということが大事です。
E女性の健康。女性ホルモンの変化が人生の各段階における健康課題の解決、骨とかですね、骨粗鬆症の問題等にも触れられています。本日のまとめとして、健康寿命100歳を目指すには、食事、減塩と運動が重要である。自分のことを知るために家庭血圧をしっかり測って、130−80未満を目指しましょう。そして心血管腎臓病を防いで、健康寿命100歳を目指しましょう(表4)。
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