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No.76 |
笑いと心臓病のステキな関係〜スマイルの医学的考察〜
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伊藤 一輔 氏
国立病院機構函館病院名誉院長 日本笑い学会理事
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笑いは人間関係の最良の潤滑油で、健康を保つための万能薬なので北海道をもっと元気にするため日本笑い学会の北海道支部「北海道笑ってもいいんでない会」を平成八年八月八日に「ハハハッ」と旗揚げし、平成28年8月8日、道民の笑いの日が制定されました。なぜ都道府県で初めて北海道が道民笑いの日を制定したのか。これは、北海道の健康寿命が非常に短いので、それを伸ばすために笑いがもたらす前向きな効果で何とか健康寿命を伸ばそうということが趣旨でした。
この世の中にたくさん生命体がいますが笑うのは人間だけなんです。では、なぜ人間が笑う生命体になったのか三つに整理しました。
まず、人間は一人で生きられません。第1は、社会の中で生きるために笑うようになりました。人間関係のコミュニケーションとして、そして思いやりと愛の笑いとして発達したのではと思います。
第2は、健康に生きるために進化したと思います。全ての生命体は、健康でその生命を引き継ぐという使命があります。そのためには健康でなければなりません。
笑うと免疫力が良くなるなど数々の効果があります。第3は、『にもかかわらず』笑うこと。これは、ドイツの有名なユーモアの定義で、私たちが笑うことで困難な時も生き延びることができる。
アウシュビッツの強制収容所を生き延びたフランクルというユダヤ人の精神科医が、数分間、数秒のユーモアが自分を維持するための心の武器で、心の柔軟性を持った人のほうが頑丈な肉体を持った人よりも耐えたと言っています。
では、今日の本題である心臓病とストレスについて話します。ストレスはなぜ心臓に悪いのか。大震災や興奮したときには、急性のストレスで、交感神経が非常に活発になり、心拍数も血圧も上がって、動脈が収縮して血流も低下します。そして、血液が凝固しやすくなって、動脈内に血栓ができて心筋梗塞とか脳卒中になります。同様のことは、慢性のストレスが長く続いても起こります。
次に、笑いとユーモアと心臓病について話します。これは大阪大学の研究ですが生活を楽しんでいる人とあまり楽しんでいない人を比べると、生活を楽しんでない人は、楽しんでいる人に比べて、死亡が心臓病は1.91倍、脳卒中は1.75倍増えるという結果が出ました。つまり、ポジティブな心理状態は心臓や血管の病気を予防する可能性があるかもしれません。
では、なぜ笑いは心臓にいいのか。私たちの体の中には自律神経、交感神経という活動する神経とリラックスする副交感神経があります。ストレスで交感神経が高まりますが、笑うと副交感神経が高まり、リラックスして、落着いた状態になるというのがポイントだと思います。
今、新型コロナウイルスで、社会全体が笑うことが難しい状況になっています。こんなときは、必ずしもワッハッハと大笑いしなくても、自分がホッとできるように、ちょっと微笑むだけでも、そういうポジティブな気持ちが大切です。なぜなら、笑いには私たちを助けてくれるすごい力があるからです。
クラークさんは北大で「少年よ、大志を抱け」と言いましたが、私は、「中年よ、妻子を抱け」「老年よ、笑志を抱け」と言います。新型コロナ禍のときこそ、前向きに笑って免疫力を高めるように暮らしたらいいのではないかと思います。

