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講演  No.72

「元気が出る健康長寿のヒント」

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旭川医科大学名誉教授 心血管再生先端医療開発講座特任教授
長谷部 直幸 氏



長谷部 直幸氏

 

 今年の北海道心臓協会市民フォーラムは、コロナ禍のために皆さんに直接お集まりいただくことができないので、ウェブ動画で「元気が出る健康長寿のヒント」というお話をお届けします。
 さて、元気な長寿の方にはどのような特徴があるのかを調べると一つ目は、肥満の方はいない、二つ目は、たばこを吸われる方はいない、三つ目は、血圧は低めの方が多く、四つ目は、運動している方が多い、五つ目に、老後も働いている方が多いということがわかりました。
 まず、元気な長寿の方には肥満の人はいないというお話です。
 日本人は肥満に向かっていると言われます。メタボ、メタボと言われるが、内臓肥満、内臓脂肪がたまってくると、これを背景にして高血圧、糖尿病、脂質代謝異常が起こりやすくなり、動脈硬化が進むことが知られています。これら四つを全て持っている方は、何もない方に比べると、30倍、動脈硬化が進みやすいというデータがあります。
 2番目の特徴は、元気な長寿の方にたばこを吸っている方はいないということです。日本人は何で亡くなるのかというと何といっても、たばこであります。たばこは、がんの問題があります。そして、心血管病のリスクを高め、肺が壊れる肺気腫になり在宅酸素療法になるなど、合わせると年間12万人ぐらいの日本人がたばこで亡くなると言えます。
 三番目は、血圧は低めの人が多いということです。高血圧、血圧が高いという状態が続くと、脳卒中や心筋梗塞、腎不全が起きやすいと言われますが、その大元にあるのは動脈硬化です。血圧が高い状態が続くと、動脈硬化が進みます。そのために、脳卒中、心筋梗塞、腎不全が起きてくるということになります。高血圧のない方が心臓や血管の病気を発症するリスクを1とします。そのときに、高血圧のある方が治療を十分に受けられなくて、つまり血圧のコントロールができていないという状態にあると、2倍、心臓や血管の病気が起きやすいということを表しています。
 もう一つ、日本人は塩分を取り過ぎていることです。高血圧は、動脈硬化を進めて、脳卒中、心筋梗塞、腎不全を起こしますよという話をいたしましたが、この高血圧は、塩分を取り過ぎると起きてきます。塩分の取り過ぎは高血圧につながります。日本人の食塩摂取量、僅かには右肩下がりなのでありますが、平成21年でもまだ10グラムを超えていました。
 高血圧の方の減塩の目標値として、医師は6グラム未満にすることを勧めているのです。減塩をすると、1日1グラム、2グラム、3グラムの減塩で年間の心筋梗塞や脳卒中の発症リスクが3%、6%、9%減少することが知られており、減塩は極めて重要です。
 減塩をするとそれだけで血圧も下がりますが、DASH食を摂ること、減量すること、運動すること、お酒を控えることで、上の血圧は3から5ぐらい、下の血圧も2から3ぐらい必ず低下する、生活習慣の修正で血圧を下げることができます。
 DASH食とは、飽和脂肪酸を控えて、果物や野菜をたくさん摂る食事です。
 さらに、カリウム、カルシウム、マグネシウムというミネラルですが、これはDASH食が圧倒的に高くて、1.5倍から2倍含まれていることになりますし、食物繊維も豊富なので、果物や野菜を摂ることを勧めています。
 マグネシウムは、天然のカルシウム拮抗薬と呼ばれています。カルシウム拮抗薬というのは、血圧を下げるお薬で、飲んでいる方もたくさんいるのではないかと思いますが、この血管平滑筋という血管をつくっている筋肉に働き、収縮を抑制します。緊張を緩めることができるわけです。だから、マグネシウムには血圧を下げる方向に向かわせる働きがあることがわかります。
 さらには、交感神経の終末というところからノルアドレナリンという物質が出てますが、これは心臓を頑張らせる物質で、この物質が出てくるのをマグネシウムは抑制するので、心臓を穏やかにしてくれる、ストレスを取ってくれるという働きがマグネシウムに期待できます。
 さらには、副腎からアルドステロンというホルモンが出てきますが、このホルモンの分泌を抑制する働きもマグネシウムにはあるので、このアルドステロンは、水やナトリウムを体にためて、血圧を上げる方向に向かわせるホルモンなので、血圧を落ち着ける方向に働いてくれるということがあり、全てを合わせると、マグネシウムというのは心臓や血管を保護する大変優れた物質の一つです。
 4番目が、元気な長寿の方には運動している人が多いということです。運動は心臓や血管にいいというのは、皆さんご承知のとおりです。代謝に効き、減量にもちろん効きます。骨や筋肉を丈夫にしてくれ、ストレスの解消に有効です。
 先ほど来お話ししたメタボですが、メタボの解消には1日1万歩歩くことを勧めます。もう少し早く歩く、これを速歩というのですが、2,000歩を10分間で歩くようなスピードだと、毎日10分以上歩くことで十分と言われています。歩くというのは基本です。
 最後に、元気な長寿の方は老後も働いている方が多いということです。日野原先生のスケジュール帳を一度見せていただいたことがありますが、3年先までびっしりスケジュールが埋まっていました。3年先までのスケジュールをこなさなければいけないという気持ち、その意識が元気を生み出すのです。その発想は極めて重要だと思います。
 今日は、元気が出る健康長寿のヒントということでウェブ動画をつくらせていただきました。一つか二つでも皆さんの参考になることがあれば幸いだと思います。


  講演   すこやかハート
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