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糖尿病と心臓病のつながり
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三浦哲嗣氏
札幌医科大学 循環器・腎臓・代謝内分泌内科学 教授
もう一つの基本は、運動療法ということで厚生労働省が健康づくりのための運動指針2006として1日3エクササイズを推奨しました。1エクササイズを3回やるわけですが、生活活動では、20分の歩行、室内のお掃除20分、床磨き、お風呂掃除16分をどれか一つで1エクササイズです。運動活動では筋トレが20分、体操が18分、ゴルフ、カートを使って18分ぐらい、水中運動が15分ですが、ゴルフを18分しかやらない人はまずいないと思います。打ちっ放しに行って少しエクササイズする、30分やるだけで2エクササイズ分、あるいは、水中運動を15分しかやらない人はいないと思いますので、こういう習慣を1日3回分やっていただきたいと思います。買い物や掃除とこういうものをうまく組み合わせると、1日3エクササイズぐらいは、そんなに敷居の高いものではないのではないかと思います(表6)。
最後にまとめますと、糖尿病患者は近年増加しています。20歳以上の2割から3割が糖尿病かその予備軍ですし、世界中では4億人を超えています。ですから、糖尿病の管理はWHOが非常に力を入れています。
それは、糖尿病を管理することが心血管病あるいは腎臓病の克服に非常に重要であると同時に健康寿命を延伸することにも役に立つという理由からです。
糖尿病の合併症の予防には、心血管病を含めて、血糖だけではなく、血圧やコレステロールの管理が重要となります。一般療法が危険因子の管理の基本になります。ストレスの軽減というのはなかなか難しいかもしれませんが、日常生活の中でいろいろな工夫、職場の取り組みが重要です。
最後に現在の日本人の食塩摂取量は治療目標に全然達していません。平成15年から25年にかけて日本人の食塩摂取量はだんだん減りましたがまだ10グラム前後です。高血圧治療ガイドラインでは、6グラムを目標にしています。小・中学生にも食塩摂取過剰の集団が2割ぐらいはあると思います。
学校教育での減塩指導の重要性があるのではないかということで、今年、文部科学省はがん予防の教育の講座を開くことを勧めています。北海道にもモデル校がありますが、ことし、札幌医大から、五つの小学校に出向いて、がんだけではなくて、生活習慣病の授業をすることになりました。私も、12月3日に小学5年生に授業を行います。ちょうど、今日お集まりの方のお孫さんの世代かもしれませんが、子どものときから食塩摂取について十分にわかってもらうことが必要だと思っています(表7)。