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講演  No57

講演 患者さんのための循環器受診ガイド
〜気をつけたい症状とは?〜

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筒井裕之氏

筒井 裕之氏
北海道大学大学院医学研究科 循環病態内科学 教授



 皆さん、こんにちは。循環器内科に患者さんが来るのは、心臓病ではないかという症状があって来る方が一番多いわけですが、この症状を患者さんにわかりやすく説明してもらう、そして、先生が皆さんの困っている症状を正しく理解することが診察の基本です。しかしこれが簡単ではないという状況があります。まず、今の状況を皆さんにご紹介して、それから実際のお話を始めます。

 私は、病院の仕事もしておりますが、患者さんから「先生がなかなかきちんと説明してくれない」というご意見をよくいただきます。その背景には、患者さんが悪いと思っている症状を十分説明できないことがあります。随分前の外来の診察室は、先生が紙の上で病気はこうだと説明しながら患者さんに話をしていました。しかし最近では、先生がコンピュータの画面ばかり見て、患者さんの顔を一度も見なかったということがあります。どうしてそうなるかというと、今は電子カルテというシステムのため、ほとんどの病院が紙のカルテをなくし、コンピュータ上にカルテがあります。以前は、紙以外に、胸の写真ですと前に置いたり、心電図は紙で見ておりましたが、検査データや画像データが、全部、電子カルテの上に表示されるのです。さらに、お薬の処方箋もコンピュータ上で作成して、薬局にそのまま送られる時代になりました。したがって、患者さんの顔を見ながら診察するのが基本ですが、多くの診療に必要な情報がコンピュータに集約されているのが今の診察現場の状況です。

 では、先生はカルテに一体どんなことを書いているのでしょうか。例えば、診察室の電子カルテに心臓の表面を走っている血管の造影写真が出てまいります。その写真を見ると血管の根元に近い部分がその先よりも細くなっています。それを我々循環器内科医はカルテに、「冠動脈の近位部に高度の器質的な狭窄があるから治療しましょう」と書きます。ほとんど日本語と思えないようなことを書いています。冠動脈というのは、心臓の表面を走っている血管です。したがって、心臓にとって最も重要な血管です。これは心臓の表面を冠のような形で走っているので、こういう名前がついています。「近位部」というのは根元に近いところですが、「高度の器質的な」というのはその形に変化があることを医学用語ではよく表現いたします。狭窄は、おわかりいただけると思います。

 このように今の診療は、循環器だけに限らず、膨大な情報を上手く整理しないと出来ない状況になってます。こういう状況を踏まえて、東京医科歯科大学循環器内科の磯部先生が『話を聞かない医師、思いが言えない患者』という本の中で、「医師が診療の中で患者の話を十分に聞くだけの余裕がなくなったのは、一つは医療自体が非常に高度化し、情報が非常に多様かつ膨大になった。そして、患者が治してほしいという内容も高度化してきた。つまりお互いの思いが非常に強くなり、またやることも増えているという現状によるのだと思う。我々医師と患者との会話は異文化交流であり、お互いが理解しようと相当努力しなければなかなかうまくいかない。」と書いています。

 そこで、今日は皆さんに循環器受診ガイドということでお話をすることにしました。皆さんにこういう症状に気をつける、そして病院でこういう症状だったら病気の可能性があります、そういう症状だったらあまり心配しなくてもいいという話があったときに、医師と患者がお互いによく納得するために、お互いに歩み寄っていかなければいい診療関係にならないということです。

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  講演   すこやかハート
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