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No47 |
あなたの理解が“良いお医者さん”を作ります
〜上手な健康管理と賢い病院のかかり方〜
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家庭で血圧、体重を測りましょう
さて、こんな話ばかりをしていますと、あの医者は本当にわがままな何という医者だろうと思われます。それでも今日はいいかと思ったのですが、それではあまりに自分がかわいそうだと思いますので、少し健康管理のコツのお話をさせていただいて中和したいと思います。血圧を家庭で測ることと、家庭で体重を測るということを少しお話ししたいと思います。
病院と家庭で高血圧の基準は違います。従来は病院の血圧で、上が140、下は90が高血圧の基準になっておりました。高血圧学会では家庭で血圧を測ってくださいと運動しています。家庭の血圧で高血圧の基準は135の85を目安にしてくださいと言っております。皆さんご家庭で毎日測る血圧の基準として覚えていただきたいと思います。
そして、その血圧を測るときには、ぜひ上腕ではかる血圧計をお選びください。指や、手首で測る血圧計は大変持ち運びに便利でおしゃれですけれども、誤差が大きいのです。もしこれから買われるのでしたら、是非上腕ではかる血圧計をお求めください。
そして、家庭では朝と晩の2回測るのが理想です。朝は起きてから1時間以内に、トイレに行ってご飯を食べる前、お薬を飲む前にはかりましょう。夜は就寝前、床に入いる前にはかりましょうとお勧めしています。朝と晩の2回血圧をはかって、記録をお医者さんに見せて相談されるといいということです。
図8どれ位まで血圧は下げるといいのかの目安も出しています(図8)。65歳以上の方ですと、病院に来たときの血圧は140、90未満、先ほどの高血圧の基準です。お家の血圧では135の85未満を基準にしましょう。65歳未満の方ですと、病院の血圧は130の85未満、家庭の血圧は125、80未満にしましょうということを目安としてお勧めしております。この数字はぜひ覚えていただいて、家庭で血圧をはかるときに参考にしていただきたいと思います。
次に体重ですが、家庭で体重を測りましょう。私の外来に来ている患者さんが私に教えてくれた一句ですが、「体重計そっと乗ってもデブはデブ」と綾小路きみまろさんの作だそうです。実は私の外来患者さんには必ず私の目の前で体重計に乗ってもらっております。一緒に数字を見て反省することを二人でしております。これはある種の抑止力ですけれども、女性の患者さんは最初もう絶対嫌だと、長谷部というのは何という医者だと思っておられても、そのうち分かっていただいて、気軽に乗っていただけるというようなことでやっております。
私ども心臓や腎臓の病気などを見ておりますと、むくみというのが体重にも表れるというのが大事なポイントだということを、皆さん知っておいていただきたいと思います。心臓の状態が悪い、腎臓の状態が悪いとむくみが強くなり、体重が増えるのです。そういう病気をお持ちの患者さんのときには、私ども体重を大変気にいたします。おうちで毎日のように体重を測っていただくというのは、そういう意味でも必要になっております。
図9日本人は肥満に向かっているのですが、体重と身長から計算する体格指数(BMI)がございます。男性は経年的にどんどん右肩上がりです。どんどん肥満に向かっているわけです(図9)。これは年代別に色分けしているのですが、水色の40代が男性では最も肥満になりやすいということがわかります。
女性はちょっと違います。この緑の20代の若い女性がどんどん右肩下がりになっています。若い女性はどんどん痩せています。しかし40代を超えますと右肩上がりになってくる。みんな肥満に向かっています。メタボリックシンドロームと最近よく言われます肥満が問題になる病気は結局ここに行き着くのですが、内臓肥満というのはウエストをはかることで代用しましょうということにしています。
よくご承知だと思いますが、男性85センチ、女性90センチ以上で内臓肥満とするのが基準の第一なのです。女性の90センチというのはちょっと甘い、日本の小柄な体格の女性では80センチを超えたら、内臓肥満の危険があるとすべきではないかと言われております。基準は見直されるものと思います。ですから、女性は80センチを超えたら、男性は85センチを超えたらやっぱり気をつけようということです。そういう人の血圧や、血糖値、中性脂肪がちょっと高い、善玉のコレステロールが低いということが合わさってきますと、心臓や血管の病気を起こしやすい。だから、メタボリックシンドロームとして、肥満をまず押さえましょうと申し上げているわけです。
禁煙の話は後で田中先生が大変面白いお話をしてくださいますけれども、血圧や血糖値、コレステロールなどを控えると、心血管病、心臓や血管の病気は抑えることができますが、それよりもタバコをやめるほうが効果は大きいということがあります。
“癒やし”ということが心臓や血管の病気を予防するということを、私ども色々やっております。温泉に入ると癒やされて、血圧が下がったり動脈硬化が予防できる。或いは、今中頓別町でNPO法人をつくりまして、森林を歩くとすごく健康にいいことを実証しています。最近やっていますのは認知症ですね。認知症も予防できるということを見ているのですが、とにかく体が癒やされる、気持ちが癒やされるというのは健康に良いことです。
これはちょうど私の外来の患者さん20名で温泉に通いまして、動脈硬化は本当によくなるのだろうかというのをみたときのスナップ写真なのですけれども、本当にいい方向に向かうということだけ申し上げておきたいと思います。また何かの機会に詳しくお話しすることができればと思っています。
今日の主なテーマは「皆さんの理解が良いお医者さんをつくります」ということだったのですが、今お医者さんが置かれている現状を皆さんに知っていただければ、多分それが様々なところに波及して、本当は良いお医者さんでいたいお医者さんが悪くならずに良いお医者さんに戻れる、良いお医者さんのままでいられるということがありますということを申し上げて、私のお話を終わらせていただきます。
長時間ご清聴ありがとうございました。
<座長・筒井裕之先生>
日本の医療の現状とともに、皆さんご自身の健康管理について大変わかりやすくお話をいただきました。
我々が最も信頼したい医療が今非常に大きな問題に直面しているということですが、それを解決していくためにはシステムそのものの問題が非常に大きいわけです。皆さんが一番関連の深い医療に携わっている医師が今どういう問題を抱えているのかということを、皆さん方に知っていただく非常にいい機会になったのではないかと思います。
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