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NO.10 |
「ストレス」
(2−2)
4 タイプA行動パターン
虚血性心疾患になりやすい性格傾向や行動型があることが知られていて、タイプA行動パターンと呼ばれています。この概念はもともと欧米から提唱され、具体的には、性格は攻撃的、競争的、野心的であり、行動は機敏、性急で常に時間に追われ、身体面では高血圧や高脂血症が多いという特徴をもちます。タイプAはタイプB(正反対の人)にくらべ虚血性心疾患に2倍なりやすいとの報告があります。このタイプA行動パターンの人は常に何かと競争し、多くの仕事を抱え込み、ストレスが多い状態になっていると考えられます。日本では、欧米のタイプAとは少し異なり、敵意や攻撃性はそれほど表出されず、性急さや仕事中毒といった仕事に対する過剰適応が日本人的なタイプAの特徴と考えられていて、この違いには日本人の文化的背景、国民性が関係しているようです。
5 労働時間・睡眠不足
最初に述べた、過労死の問題にも関連しますが、長時間労働自体が精神的・肉体的なストレスとなります。また長時間労働は睡眠不足の原因となります。2002年に報告された九州の心筋梗塞患者を調べた報告で長時間労働と睡眠不足が心筋梗塞の危険率を上昇させることがわかりました(表1)。最近、以前より緩和された厚生労働省の過重負荷の認定基準は「発症前1ヶ月間におおむね100時間又は発症前2ヶ月間ないし6ヵ月間にわたって、1ヵ月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務との関連性が強いと評価できること」とされ、1ヶ月を約4週間とするとおおむね週60時間を越える労働から過労死の危険性があるとの考えになってきていると思われます。
表1 労働時間、睡眠時間の心筋梗塞への影響 心筋梗塞の危険率 労働時間(1週間当たり
40時間以下
41〜60時間
61時間以上
1.0(基準)
1.3倍
2.1倍睡眠時間5時間未満の回数(1週間当たり)
0回
1回
2回以上
1.0倍(基準)
1.2倍
2.3倍
6 ストレスを回避するために
仕事のストレスに対しては、職場で生じるストレスを軽減して、個人のストレスへの耐性を高くする対策が考えられます。具体的には、仕事の量・質を適正化し、上司の部下に対するサポートや職場のコミュニケーションを良好にするように、職場環境を快適にすることが必要で、職場全体の問題として、管理者や産業衛生スタッフが一丸となって対策にあたるべきです。
個人への対策としては、タイプAのような過剰適応の人がいる場合、強いストレス状態に置かれているわけですが、本人はそのことに気づいていません。周りがそのことに気づかせてあげるようにすることが大切です。そのほかに、運動・スポーツは気分を爽快にし、精神状態を好転させることがわかっています。
心臓・血管病は後遺症を残す場合も多く、特に働き盛りの過労死につながると、本人、ご家族、会社のすべてにおいて非常に不幸なことです。これを機会にぜひ個人でも、会社としてもストレスや労働時間を見直すようにしていただきたいと思います。
(最終回)

