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NO.11

生まれつきの心臓の病気を持った
子どもたちが大人になったら
― 成人先天性心疾患のお話し ―(後編)

(1/4)


北海道立子ども総合医療・療育センター
横澤 正人氏


<成人先天性心疾患の重症例@:フォンタン手術>

 「ねえ、ねえ、先生。あたしさあ、2月から札幌で一人暮らし始めるんだけど、近くにかかりつけで先生の知り合いの先生いない?」
 外来でこう切り出してきたのはAさん、21歳、女性。三尖弁閉鎖という複雑な先天性心疾患でフォンタン手術後の患者さんです。普段は地元の総合病院の小児循環器医の所に通っており、1年に1回、私の外来を受診して詳しい検査をしていました。このたび札幌に就職することが決まったので、急きょ、受診したとのことです。

 三尖弁閉鎖という病気について説明したいと思います。通常の心臓では上半身からの静脈血は上大静脈を通って右房へ、下半身からの静脈血は下大静脈を通って右房へ集まります。右房の静脈血は三尖弁を介して右室に流れ、さらに肺動脈弁を介して主肺動脈に流れます。主肺動脈は左右の肺動脈に分かれ、左右の肺でガス交換されて赤いきれいな動脈血となり、右が2本、左が2本、計4本の肺静脈を通して左房に流れます。左房の動脈血は僧帽弁を介して左室に流れ、さらに大動脈弁を介して大動脈に流れます。大動脈は広く細かく枝分かれしていき全身に動脈血を供給します(図1)。
 Aさんは右房と右室の間にある三尖弁が生まれつき完全に閉鎖している病気です。また右室も小さく、肺動脈弁も狭窄していました。こんなに重症の心疾患があっても、一般的にほとんどの赤ちゃんはお母さんのお腹の中では元気に発育します。そして生まれた後に唇の色が紫色になるチアノーゼ(低酸素血症)や呼吸が早い、ミルクの飲みが悪いなどの心不全症状、あるいは心雑音などで病気が発見されます。
 Aさんの場合もチアノーゼで病気が発見され、地元の病院から当院に緊急搬送されてきました。Aさんの場合の血液の流れは以下の通りです(図2)。
 右房に入った静脈血は心房中隔欠損という右房と左房の間に開いた孔を介して左房に流れ、肺静脈から左房に戻った動脈血と混じった状態になり、左室、大動脈と流れていました。右室は小さく、肺動脈弁は狭窄していました。右室と左室の間には心室中隔欠損という孔が開いており、この孔を介して小さな右室に血液が供給されていました。
 このような心疾患の場合は、右心室を肺に血を流すための心室(ポンプ)、左心室を身体に血を流すための心室(ポンプ)として使うことは不可能です。
 右心室+左心室で1つの心室(ポンプ)として使用するしか方法はないので、一つの心室で肺と身体の両方に血液を流す特殊な手術方法が必要になります。それがフォンタン手術です(図3)。

図2 図3


  
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