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NO.11

生まれつきの心臓の病気を持った
子どもたちが大人になったら
― 成人先天性心疾患のお話し ―(後編)

(4/4)


北海道立子ども総合医療・療育センター
横澤 正人氏


 20歳後半は一つの大きな節目と言われています。案の定、D君も今年の春からチアノーゼが進行し、身体を動かすのがしんどくなってきたそうです。胸部のレントゲン写真でも心臓が著明に拡大し、不整脈が頻発するようになりました。
 「大学で循環器内科をやっている同期にお願いをしてみたんだが、とてもじゃないが診きれないと言われて断られちゃったんだよね…」ということで、子ども病院で引き受けることになりました。
 しかしながら、D君の治療は、困難の連続でした。検査や薬の調整のために短期の入院を勧めましたが、本人が頑なに拒否し続けました。最後は不整脈の発作で急に具合が悪くなり緊急処置が必要になったため、ようやく入院してくれました。
 チアノーゼが強いので24時間の酸素投与を勧めても、「C先生の時はそんなことは言われなかった」と言って難色を示し、心不全のコントロールのためにβブロッカーや末梢血管拡張剤、利尿剤といった薬の投与を勧めても、「C先生の時はそんなことはしていなかった、そんなことしないでも元気だった、どうしてそんなことをしなくちゃならないの…」と言って応じてくれません。
 あらかじめD君の年齢になると急に状態が悪くなって症状が急激に進むことを医者は分かっていて、あらかじめお話はしているのですが、本人やご家族は解らないというか、なかなか信じてくれない、認めてくれないのです。
 「先生の治療を受けてもちっとも良くならないじゃない、先生の治療が悪いんじゃないか?」とご家族に詰め寄られ、やむなくC先生を呼んでご家族に説明してもらうこともありました。
 加速度的に悪くなる病気を治療しているので、最初は悪くなるのを抑えるのに精一杯で、目に見えるような効果が出るまでそれなりの時間がかかるのです。
 ただ、不整脈の発作で急変し緊急搬送を繰り返す時期があり、治療によってそれが落ち着くようになったので、ご家族が以前の心臓の状態ではないこと、そのために以前より強い治療をしていることをようやく受け入れてくれたようです。
 半年くらいかかりましたが、私に対するご家族の不信感も徐々に薄れ、私の言うことをすんなり受け入れてくれるようになりました。今は、状態がちょっと悪くなると「心配だから早めに入院して処置を受けたい、でも良くなったらすぐに帰りたい」と言ってくれるようになりました。
 ただD君はもう32歳です。子ども病院の対象年齢をかなり超えています。今のところは、病院長の了解をいただいて入院を許してもらっていますが、他の入院患者さんや病院スタッフの一部には、この年齢の患者さんが入院することに違和感を持っている方も少なからずいるようです。D君の診察をいつまで続けられるか保証はありません。
 とりとめのない話になってしまいましたが、100人いれば、その中に生まれながらに心臓の病気を持っている人が1人いることに単純に驚いていただければと思います。そして、重症で20年、30年前は助からなかった子どもたちが、今はほとんどが助かるようになったこと、その子たちが、大人になって新たな危機に直面し行き場のない状況になりつつあること、大人の心臓の病気を考える上で、従来の狭心症や心筋梗塞、大動脈瘤、不整脈などに加えて、これら<成人先天性心疾患>の問題が重要になりつつあることを知っておいていただければと思います。


  
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