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睡眠環境と生活習慣病〜睡眠時無呼吸症候群の重要性〜
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札幌医科大学 循環器・腎臓・代謝内分泌内科学講座
助教 中田 圭氏
3 睡眠時無呼吸症候群の治療
持続陽圧換気療法(CPAP:シーパップ)と呼ばれる治療(図5)が、最も効果的で標準治療となります。閉塞性の無呼吸の改善を目的に、鼻にマスクをあて、自発呼吸患者の自発呼吸全般にわたって気道内に“一定圧”の空気を送ることで、喉がふさがらないようにする治療です。CPAPは保険診療で行われ、月額3,000-5,000円の負担額となります。様々なマスクが用意されており、慣れれば熟眠が得られ、日中の眠気の軽減効果があり、死亡率の低下のデータもあります。自宅に機器を設置し、月1回の通院で治療効果を見ていきます。機器についてはメーカーが設置やメンテナンスを担当しますので安心して使用いただけます。その他の治療として、図6に示すように様々なものがあり、それぞれの長所と短所があります。非糖尿病患者では、SASの影響として無呼吸症候群の重症度が強いと血糖変動が大きくなることが知られ、CPAPで血糖変動は改善することも知られています(Nakata K, et al. PLoS One. 2017; 12(12):e0188689. 図7)。
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4 おわりに
このように、健康的な睡眠は2型糖尿病などの生活習慣病の管理において、重要なライフスタイルです。眠るための環境や状況を“睡眠衛生”といいますが、いかに睡眠衛生に注意を払い、より良い睡眠を目指すかが重要となってきます。睡眠障害は多くの生活習慣病によく見られ、睡眠の量、質、入眠タイミングの障害や中途覚醒を引き起こし、肥満のリスクの増加や日中の身体・精神機能障害、糖代謝と関連しています。2型糖尿病患者さんでは半数以上がOSAを持っており、その重症度は血糖値と関連しています。睡眠時間そのものはU字型の健康アウトカムと関連すると言われ、長くても短くても悪影響となり、7時間程度の睡眠が理想とされています。一方で睡眠時間が短い人は、睡眠環境を整え、よく眠ることでインスリン感受性と呼ばれる糖代謝の改善とエネルギー摂取量を減らすことにつながります。また睡眠負債と呼ばれる平日の睡眠不足を、休日に「取り戻す」長く寝る睡眠では、その負の影響は逆転させるのに十分ではないとされ、日々の睡眠を整えることが重要です。睡眠から考える生活習慣病管理を意識していただき、睡眠時無呼吸症候群の検査を身近な医療機関にご相談されることをお勧めします。

