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高血圧診療の新しいガイドライン
日本高血圧学会 高血圧治療ガイドライン2019について(後編)
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北海道大学大学院医学研究院 循環病態内科学
岩野 弘幸 氏
前編では、2019年に改訂された新しい高血圧治療ガイドラインをもとに高血圧診療の大切さと診断について解説しました。後編では、おもに高血圧の治療について触れたいと思います。
●生活習慣の大切さ
高血圧の治療には、血圧を下げる薬(降圧薬)を用いた薬物療法だけではなく、食事や運動などの習慣の修正や、睡眠時無呼吸症候群に対する持続性陽圧呼吸などの非薬物療法もあり、とくに生活習慣の修正は高血圧患者さんだけでなく、前編で紹介した正常血圧にあたる人以外のすべての人に推奨されています。生活習慣のなかでとくに重要なのが食塩制限といわれています。食塩の過剰摂取と血圧上昇との関連は多くの研究で証明されており、6 g/日未満を目標とした減塩により有効な降圧が得られるとされています。日本人の食塩摂取量は昔から過剰であることが指摘されており、近年の啓蒙活動により徐々に減少傾向にあるものの、男性10.8 g/日、女性9.1 g/日と依然として多いことが指摘されています。どのような食事に食塩が多く含まれているかを知り、効果的な減塩のコツを栄養士さんに指導してもらうことで減塩を達成することができます。その他、野菜や果物などからのカリウムの摂取や適切な運動習慣、禁煙なども重要な修正項目として挙げられています(表1)。
●血圧レベル別の高血圧管理計画(図1)
高血圧と診断されると、血圧の値に応じた管理が必要になります。最終的な目標は、脳心血管病の発症を予防し、それらによる死亡を減少させることであり、目標を達成するにはリスクに応じた治療と、適切な治療が行われているかどうかの評価を繰り返し行っていくことが重要です。とくに2019年のガイドラインでは、管理の対象に正常血圧と正常高値血圧、高値血圧も含め、生活習慣の重要性を強調しています。正常血圧のうちから、生活習慣を見直して血圧が上昇していかないかどうかを観察していくことで、新たな高血圧の発症を予防していくことも高血圧診療には大切な事項です。