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NO.17 |
脳卒中ガイドライン2009─前編
(2−2)
旭川医科大学 内科学講座 循環・呼吸・神経病態内科学分野
片山 隆行
C心房細動
D喫煙![]()
心房細動は不整脈の一種で、心臓が不規則に脈打っている状態です。心臓の中の弁に異常があって生じる場合もありますが、最近では長寿高齢化に伴って心臓弁に異常が無くても心房細動を生じる場合が多くなりました(非弁膜症性心房細動)。
心房細動があると、心臓の中に「血のよどみ」が生じるため、よどみのところに血の塊(血栓と言います)が出来やすくなります。この血栓が血液の流れに乗って脳に運ばれると脳の動脈が詰まって脳梗塞を生じることになります。心房細動の方が脳梗塞を発症する確率は約5%/年と言われています。これは、心房細動のない方の2〜7倍と言われています(表2)。特に以下の条件が2つ以上ある方は要注意とされています[心不全・高血圧・75歳以上・糖尿病・過去に既に脳卒中を起こした方]。このような場合は、血液をサラサラにして血栓が出来にくくなるようにする薬を使うことが予防上効果的とされています。
E飲酒タバコは「百害あって一利なし」です。脳卒中の主要な危険因子とされています。5〜10年の禁煙によって脳卒中のリスクは低下すると言われていますので、今からでも禁煙に取り組みましょう。最近は禁煙補助薬も使えるようになっています。
F睡眠時無呼吸症候群「酒は百薬の長」とも言いますが、何事も「過ぎたるは及ばざるがごとし」です。適量を守るようにしましょう。男性であれば一日アルコール量は30gまでが適切とされています(女性は更に少なめが適切です)。これは、ビール(度数5%)でいうと600ml、日本酒(度数15%)で200ml、ワイン(度数11%)で270mlにあたります。また、最低週1〜2日は休肝日を作りましょう。
Gメタボリックシンドローム誰でも寝ているときには呼吸は緩やかになりますが、寝ているときに息が止まってしまう人がいます。これを「睡眠時無呼吸症候群」と言います。太っている人やイビキの大きい人、深酒をする人などに多くみられます。寝ている間に息が止まってしまうと、体の休息を妨げるばかりか、心臓への負担や血圧上昇の原因ともなります。ご家族から「イビキが大きい」「寝ている間に息が止まっている」と言われた方や、夜寝たはずなのに日中眠気が強い人はかかりつけの先生に相談してみましょう。特に太っている方は要注意です。
H慢性腎臓病(CKD)![]()
メタボリックシンドロームは、いわば「生活習慣病の予備軍」です。肥満(ウエスト周囲径が男性で≧85cm、女性で≧90cm)に加え、イ:中性脂肪≧150r/dlかHDLコレステロール<40r/dl、ロ:血圧≧130/85mmHg、ハ:空腹時血糖≧110r/dl、の2つ以上を伴う方がこれにあたります(表3)。適切な体重までの減量と、運動・食事による生活習慣の改善を基本とし、必要に応じてお薬による治療が勧められます。
CKDは腎臓に何らかの異常所見が見出される、もしくはGFR(糸球体ろ過量)が<60ml/min/ 1.73uの状態が3か月以上持続するものとされています。自覚症状は出にくいので検診等でチェックしておくことが重要です。原因は糖尿病などさまざまです。
原因になっている病気をきちんと治療しておくことと、生活習慣の改善(禁煙・減塩・肥満の改善・節酒)と血圧の管理が勧められます。★
普段からの節制によって健康づくりをしていくことが、健やかな人生につながると言えるでしょう。脳卒中ガイドラインは豊富な科学的データをもとに明快な指針を示していますので、是非役立てて頂きたいと思います。

