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NO.16

高血圧のガイドライン2009 臓器障害を合併する高血圧の治療
(3−3)

手稲渓仁会病院 総合内科部長
浦 信行


冠動脈疾患を合併した 高血圧の降圧薬の選択

 狭心症を有する高血圧の薬物療法では、抗狭心症作用をもつCa拮抗薬とβ遮断薬が第一選択薬になる。狭心症の原因には冠動脈の高度狭窄と冠攣縮があり、両者がともに関与している場合も少なくない。冠攣縮による狭心症にはCa拮抗薬が著効するので、冠攣縮の関与が考えられる安静あるいは安静労作狭心症を合併する高血圧では、降圧薬としてCa拮抗薬が第一選択になる。一方、器質的冠動脈狭窄による労作狭心症に関してはJSH2004では薬物療法としてはβ遮断薬のみであったが、β遮断薬とCa拮抗薬のどちらも有効であるためJSH2009では両者を第一選択薬とした。わが国では冠攣縮が関与する狭心症の頻度が高く、β遮断薬は冠攣縮を増悪する可能性が示唆されているので、機序が不明な場合にはCa拮抗薬あるいはCa拮抗薬とβ遮断薬の併用が勧められる。

陳旧性心筋梗塞

 欧米における大規模臨床試験の成績では、β遮断薬が陳旧性心筋梗塞患者の心筋梗塞再発や突然死を有意に抑制することが明らかにされている。わが国ではβ遮断薬の使用が少ないが、理由のひとつは冠攣縮への危惧である。しかし、高度の器質的冠動脈病変を有する陳旧性心筋梗塞患者では、β遮断薬が選択薬のひとつである。一方、短時間作用型Ca拮抗薬が心事故を増加させる可能性があるが、長時間作用型Ca拮抗薬は予後を悪化させることはない。また、ジルチアゼムが心不全のない非Q梗塞患者の心筋梗塞再発を減少させたという成績がある。わが国の多数例の追跡観察研究でもβ遮断薬と長時間作用型Ca拮抗薬はともに心事故発生率を減少させたが、短時間作用型Ca拮抗薬には悪化させる傾向が見られている。  
 広範な心筋梗塞により左室収縮機能が低下している患者(駆出率40%以下)では、RA系阻害薬により左室リモデリング(心室拡張、心筋肥大、間質線維化)が抑制され、その後の心不全や突然死の発生率が減少することが明らかにされている。ゆえに心筋梗塞により左室拡張や左室収縮機能不全がある患者ではRA系阻害薬が良い適応になる。また、心筋梗塞後の低心機能患者において、RA系阻害薬・β遮断薬・利尿薬に選択的アルドステロン拮抗薬を追加投与すると予後がさらに改善することが報告されている。

おわりに

 以上の様に、臓器合併症を有する高血圧の治療に関して、腎臓はJSH2004から実質的な改訂はないが、脳、心に関しては指摘した部分での改訂が示された。生活習慣の修正は当然薬物療法以前あるいは同時に行うことが重要である。


  
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