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第40回日本循環器予防学会報告
札幌医科大学第二内科・大学院生
中村 陽介さん
平成17年5月27日から2日間、横浜市の横浜情報文化センターにて第40回日本循環器予防学会・日本循環器管理研究協議会総会が開催されました。この学会では情報化時代における循環器病予防をテーマに、シンポジウムとして(1)栄養分析法と循環器予防(2)情報化時代の予防医学(3)生体リズムと循環器疾患、一般演題として(1)代謝・栄養(2)生活習慣・教育(3)動脈硬化の危険因子(4)脳卒中の予防などに分かれ、様々な演題発表、討論が行われました。その中でも特に情報化時代の循環器病予防は本学会のメインテーマであり、それを中心に今回の学会参加で学んだこと及び自分の発表について述べさせていただきます。
近年、我が国では生活様式の変化等により動脈硬化に基づく疾患が増加しており、その予防のためにも生活習慣病対策が重要となっています。現在では生活習慣病の予防、特に循環器疾患に関しては定期的な検診とその成績に基づく生活習慣の改善指導や医療を行うという方式が一般化されています。しかし生活習慣病の対象者は非常に多く、効率的に予防を行うには近年発達の著しい情報技術ITの助けが不可欠と思われ、特に勤務者、自営業者等で多忙、不規則な生活習慣を余儀なくされている人達の検診においては有用と思われます。
現在インターネットや携帯電話のメール機能を利用して検診成績と家庭や職場における日常生活時の測定値(血圧等)のやりとりが、検診機関と受診者、受診者と主治医の間で行われつつあり、本学会でも横浜市立大学医学部情報システム予防医学と神奈川県予防医学協会は共同で従来の<在宅健診>に比べより包括的な<ホームドック>の準備を進めているとの報告がありました。これは血液検査、尿検査、心電図検査、血圧検査をまとめて在宅で行うもので、受診者は人間ドックや定期健診における医師の診察、画像検査以外の多くの検査項目を受けることが可能で、血液検査は痛みの少ない拇指丘採血法により採血し、小型遠心分離機により受診者が自ら遠心分離を行い、尿検査は尿蛋白、尿糖の他に塩分、カリウム排泄量が測定可能な1/50尿測定法、心電図、血圧測定は受診者自ら小型心電計、血圧計を装着し測定。これらはまとめて1つのバッグで神奈川県予防医学協会に返送され心電図、血圧に関しては横浜市大の循環器専門医がwebを通じて診断を行うとのことでした。このようなシステムが普及すれば日常忙しく人間ドックや健診受診の機会がない人達に対して質の高い在宅人間ドックを提供できる可能性があると思われます。
最後に今回の私の発表について簡潔に述べさせて頂きます。目的は高血圧と耐糖能異常の合併と冠動脈疾患への影響について検討することで、対象は1997年4月1日から2003年5月31日までに虚血性心疾患の診断で札幌医科大学第二内科に入院した男女連続435名で(平均年齢64.5±11.2歳)そのうち351例において冠動脈造影を施行しました。入院時の測定項目として収縮期血圧値、空腹時血糖値、総コレステロール値等を測定し、各危険因子と冠動脈疾患の重症度、再発の有無について検討しました。結果は高血圧、耐糖能異常の存在により有意に冠動脈病変は重症化し、そしてそれらが合併することによりさらに重症化しました。また冠動脈疾患再発を認めた群で収縮期血圧は有意に高値であり、多重ロジスティック回帰分析では収縮期血圧は冠動脈疾患再発の有意な変数でありました。発表後、何人かの先生方から御質問や温かい助言を頂き、今後の研究を進める上で非常に有難いものでした。
最後にセミナー参加に当たり、助成をしていただきました北海道心臓協会に対し心より厚く御礼申し上げます。