NO.27 |
日本循環器病予防セミナーに参加して
北海道大学大学院医学研究科 予防医学講座公衆衛生学分野・大学院生
福井 知範さん
その後の重篤な後遺症やQOLの低下から、循環器疾患の増加と重症化に対し予防の重要性が叫ばれて久しい。しかし日々の救急外来に心筋梗塞、脳卒中に罹患した方が次々と運び込まれているのが現状である。循環器疾患の予防・疫学を学ぶ場として「日本循環器病予防セミナー」が1988年より毎年行われている。今回、久留米大学 古賀義則先生のお世話で、第18回日本循環器病予防セミナー(日本循環器管理研究協議会、日本心臓財団主催)が7月8日〜13日にかけて、佐賀県武雄温泉で行われた。私は北海道大学 岸玲子教授の推薦と北海道心臓協会の助成を受けて本セミナーに参加することが出来たので、ここに報告する。
7月8日佐賀県の会場に到着した。武雄を含め九州はそれまでの空梅雨から一変し、ようやく梅雨らしくなり、期間中全て雨だった。到着直後から早速特別講演が始まった。引き続いてWelcome Party、演習と慌ただしく過ぎて行った。
翌日から毎朝8時半より講義が行われた。心疾患、脳疾患など生活習慣に関連した疾患を如何に予防するか、そのための方策は?という疫学、統計、予防について、各界の専門家からそれぞれ系統だった講義を受けた。私は元々臨床に長く携わっており、体系的な疫学の講義を受けてたくさんのことを吸収し大変勉強になった。講義は夕方17時15分まで毎日行われ、それ以外の空き時間は全て演習に当てられた。
本セミナーの特色として「演習」が挙げられる。全期間を講師と受講生が寝食を共にし、かつ循環器予防研究を立案するものである。受講生の背景は医歯薬看護栄養製薬など様々で、かつ20代から50代、大学院生から助教授、開業医など多岐にわたっていた。その受講生36名が5グループに分かれ、喫煙、高血圧、メタボリックシンドローム、脳血管疾患などをテーマに独自の研究計画を作り上げていくのである。しかしそれは、口で言うは易く行うは難し。最終日前日が演習発表会であるため、たった4日間で、ゼロから明日にでも実際に研究を始められる完成版を作り上げなければならない。議論は連日1〜2時までに及んだ。しかし寝食を共にし一つのものを作りあげているという思いは次第にグループの一体感を育んでいった。演習発表前日は4時半までかかってスライドを仕上げ、空は白み、さわやかな朝を迎えていた。
あっという間に濃密な時間は過ぎ、発表会の後にはFarewell Party が行われ、受講生、講師陣隔てなく大いに語り合い、長いようで短かった5日間を懐かしんだ。本セミナーに参加して系統だった講義を受け、熱く議論し、全国の志を同じくする受講生の知己を得ることができ、かけがえのない経験になったと思う。唯一の欠点は毎日缶詰状態になるため、運動不足になったことであろう。この経験を今後の研究に生かしたい。また疫学を学んでいる方へは、是非次年度以降参加をお勧めしたい。
貴重な時間を割いてくださいました講師陣の先生方、また裏方としてお世話下さいました久留米大学の方々、日循協の方々にこの場をお借りして心から感謝の意を表したいと思います。
本当にありがとうございました。最後にセミナー参加にあたり、助成をして頂きました北海道心臓協会に対し心より厚く御礼申し上げます。