NO.26 |
国際キニン学会報告
札幌医科大学第二内科・研究生
佐々木晴樹さん
2005年5月26日から3日間、スウェーデンの地方都市ルンドにおいて国際キニン学会が開催された。今回から名称が"Exploring the Future of Local Vascular and Inflammatory Mediators"に変更となり、その記念すべき第1回目の開催となった。私は札幌医大・島本和明教授の御推薦と北海道心臓協会の助成金を頂き参加することができた。本学会は参加者の半数以上が医師以外の生化学者であり、我々とは異なる視点からの報告が多くみられた。日本からも数名の参加者がおり、他には南アフリカ、フランス、スイス、ドイツ、アメリカなど国際色豊かな学会であった。
キニンは、血管壁や腎臓等においてその機能調節に関与する生理活性物質であり、血圧調節、水・Na代謝に重要な役割を担っていると考えられている。そして、この系の機能異常が高血圧の成因に関与している可能性があると言われている。我々の札幌医大第二内科では、キニンの代表であるブラジキニンの受容体のうち、おもに炎症で誘導されるブラジキニンB1受容体に関しての研究を行っている。今回我々は、重症高血圧モデルラットの腎臓において、酸化ストレスを介してB1受容体の発現が亢進し、それが臓器保護的に作用している可能性を報告した。学会では、B1受容体における最新の見解や研究が発表され、それに対する質疑応答及び活発な議論が交わされ、とても有意義な学会であった。
私は国際学会へ参加は初めてであり、不安と緊張のまま現地入りした。学会会場であるルンドは、スウェーデンの首都ストックホルムよりも遙か南に位置する、小さな学園都市であった。日本から直通便でデンマークのコペンハーゲンに入り、列車で30分ほど移動しての現地入りとなった。5月といっても北欧であり、札幌よりも緯度が高いため、寒いことが予想されたが、実際には最高気温28℃と、若干日焼けしてしまう程、良い気候であった。現地ではスウェーデン語が日常語として使用されており、駅の看板などにも英語の表記がなく、移動には苦労したが、現地の人は英語力も堪能であり、私の稚拙な英語力でもなんとか通用した。
スウェーデンは、国民一人あたりの生活水準が高く、私が訪れた時期は温和な気候で、陽が落ちるのが夜の11時頃とあって、平日にもかかわらず、夕方から屋外で飲食を楽しんでいる人が多くみられ、ストレスの少ない生活を営んでいるように感じられた。学会の最終日には、主催大学による余興が行われ、「すきやきソング」を歌ったりと、大変なごやかな懇親会となった。この国際学会に参加し、自分の研究における大変有意義な勉強をさせて頂き、私自身非常に重要なステップになったと感じている。最後に学会参加にあたり、助成をしていただきました北海道心臓協会に対し心より厚く御礼申し上げます。