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NO.55 |
第17回日本心臓リハビリテーション学会参加報告
JR札幌病院 リハビリテーション室
理学療法士 近藤 淳
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7月に大阪国際会議場にて行われた第17回日本心臓リハビリテーション学会に参加しました。「心血管治療としての心臓リハビリテーション」をメインテーマとして、講演・演題数が400を超え、医師・看護師・理学療法士・作業療法士・臨床検査技師・薬剤師・管理栄養士・健康運動指導士など多職種間での意見交換が行われました。
心臓リハビリテーションは、早期離床をめざす短期的介入の時代から、現在では慢性心不全を含む心血管疾患のQOL(Quality・of・life:人生の質)と予後の改善をめざす長期的介入と認識されるようになりました。リハビリテーションの一般的な概念である身体的・心理的・社会的な回復だけではなく、運動耐容能、QOL、罹病率低下や死亡率低下といった長期予後の改善に加え、近年では心血管治療法の一つとして、血管内皮機能改善、自律神経機能改善、炎症性サイトカイン抑制、動脈硬化プラークの安定化など、多面的な効果が証明されています。
しかし、心臓リハビリテーションの大きな課題は、我が国では認知度が極めて低いということです。一般人対象の調査で、脳卒中・骨折後のリハビリテーションを知らない人が3%に対し、心臓リハビリテーションを知らない人は70%との報告があります。さらに、一般市民のみならず、医療者においてもその内容や効果が認知されていない現状もあります。我が国の循環器医療がこれまで急性期医療重視で、教育に心臓リハビリテーションが組み込まれていないことが一つの要因ではないかという意見もあります。心臓リハビリテーションを標準的心血管治療へと組み込むためには、医学教育カリキュラムにより急性期医療から維持期疾病管理まで医療者としての視点をもつこと、また、一般市民への啓発活動により心臓リハビリテーション・二次予防の社会的認知を高めることが必要と思われます。
当院においても、循環器内科医を中心に心臓リハビリテーションに日々取り組んでおります。私自身は、本学会にて、当院で心臓リハビリテーションを行った心臓病の主婦2症例について発表しました。低心機能の主婦の退院後の生活において、主婦としての役割、家族との関わりを含め、QOLというものをどのようにとらえ、そのQOL向上のために理 学療法士として何ができるのかという点について考えたものでした。この自分自身の発表の経験を含め、本学会においては最新の情報や知見を得ることができ、大変多くを学ぶことができました。これらを今後の臨床に活かし、患者さん一人一人が、「快適で活動的な楽しい生活を送ることができる」ように、微力ながらも力を尽くしていきたいと思います。
最後に、本学会への参加にあたり研究開発調査助成を賜りました財団法人北海道心臓協会に対し、厚くお礼申し上げます。

