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第56回日本透析医学会学術集会・総会参加報告
特定医療法人 北海道循環器病院
薬剤科
信太 寛和
平成23年6月17日から19日の3日間の日程で第56回日本透析医学会学術集会・総会が神奈川県のパシフィコ横浜で開催されました。本学会は腎臓・透析学を志す医師、薬剤師、看護師、臨床工学士など数多くのスタッフが集い、基礎から臨床までの幅広い優れた教育・研修の機会を提供すると同時に、最先端の研究成果を発表・討議する場として全国からたくさんの参加者を集めて毎年開催されています。
今回、私は「当院の慢性透析患者におけるHb管理のための要因解析」という演題で発表させていただきました。
腎性貧血は腎機能障害によりエリスロポエチンの産生が低下し、Hb値を基準値に維持できなくなった状態で、透析患者の合併症における課題の一つとなっています。遺伝子組み換えヒトエリスロポエチン製剤(rHuEPO)で治療することにより、透析患者の貧血はある程度改善します。しかし、rHuEPOで治療を受けている患者の15〜20%に貧血の改善効果の乏しい症例がみられることがあり、その要因として鉄欠乏状態、出血、感染症、炎症、悪性腫瘍、葉酸・ビタミンB12欠乏、高度の副甲状腺機能亢進症、不十分な透析、尿毒症物質の貯留、低栄養、ビタミンC欠乏などが関連していることが知られています。本研究では当院の慢性透析患者のHb管理に、従来から知られている要因が関連しているのか。また、その他に関連する要因があるのかということを検討しました。結果として従来から知られている透析効率や透析時間、栄養状態を良好に保つことが当院の慢性透析患者のHb管理に重要であることが再確認できました。さらに、血清Mg濃度がHb管理に影響 を与える可能性が示唆され、今後の研究課題となりました。本研究の結果を踏まえ、当院における医師とコメディカルによるカンファレンスを活用し、慢性透析患者のHb管理をより良いものにしていくことができると考えています。
また、今回の学会では本年秋に改訂予定の慢性腎臓病にともなう骨ミネラル代謝異常(CKD-MBD)の診療ガイドラインの改定案が提示されました。リン、カルシウムの管理の項目では、2006年発行の前回ガイドライン以降に登場した薬剤であるシナカルセトや炭酸ランタンなどの使い方を加えた新しい9分割図を盛り込み、さらに対象とする病態を二次性副甲状腺機能亢進症以外にも広げるなど、臨床に役立つガイドラインを期待させるものとなっていました。新規検討項目としては、リンやカルシウムなどの管理目標値の再検討、新しい薬の位置づけ、血管石灰化の評価、骨の評価があり、保存期さらには小児患者も検討課題としおり、当院でもガイドライン改訂を見据えて透析患者の治療を進めていきたいと思います。
その他にもたくさんのシンポジウム、口演があり、多くの事を勉強させていただきました。今回の学会に参加した経験を励みとし、日々の業務の中で少しでも還元できるように努力していきたいと思います。 最後に、本学会への参加にあたり研究開発調査助成を賜りました財団法人北海道心臓協会に心より厚く御礼申し上げます。