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第15回日本心臓リハビリテーション学会学術集会参加報告
札幌医科大学保健医療学部 臨床理学療法学講座 理学療法士
根木 亨氏
本学会は、1995年にその前身である心臓リハビリテーション研究会から発展、設立されたもので、心事故後の生命予後改善やQOLの獲得、質の高い社会復帰を学術的アプローチから深め、チーム医療による包括的介入から再発予防、新規発症予防も視野に入れた循環器病予防医学における幅広い活動を目的としています。本学会の会員数は、平成21年6月末現在で、医師1,346名、コメディカル4,056名を併せて5,421名を数え、会員数の増加に併せて学術集会の規模も大きくなり、質の高い研究報告が数多く発表されています。
今年の学術集会は、2009年7月18日から2日間、東京(有明)において開催されました。本年度は「医学そして医療としての心臓リハビリテーション」をテーマに据え、臨床での経験を基礎的学問にフィードバックし、臨床現場の経験的体系に学問的裏付けを与えることで、心臓リハビリテーションをより精度の高い効果的な医療サービスとして完成させることを意図した内容となっています。
近年の循環器医学分野では、心不全という病態に注目が集まっています。心臓は、その機能として全身に血液を送り全身からの血液を受け取るポンプとしての役割を果たしていますが、何らかの原因によりポンプとしての機能が十分に働かなくなると、日常生活や運動に見合うだけの血液中の酸素を全身に運ぶことが難しくなります。それに伴って、息切れや全身の疲労といった症状を引き起こすのが心不全と呼ばれる病態像です。そして、全ての心疾患の終末像として、高齢化が進み、心不全による死亡が増え続けている現状と相まって、循環器予防医学が先進的に追求するところとなっております。
心臓リハビリテーションは、心疾患患者さんの身体的、心理的、社会的機能を最大限に向上させることを目的とした多面的な介入手段として、循環器予防医学の一貫に位置づけられています。従って、心不全に対する治療戦略の中で心臓リハビリテーションの占める割合が益々高まっていくことは、自然な流れのように感じられます。榊原記念病院の伊藤春樹先生は本学会の講演の中で心ポンプ機能を理解すること、また慢性心不全の病態を正確に理解することが、心臓リハビリテーションを進める上でのキーポイントになると強調されておりました。また、本学会での一般演題約300演題の中でその1割が心不全に関連した報告で、学会報告の中に占める割合も年々増えてきています。今後も多面的に心不全に対するリハビリテーションのあり方が追求され、重要な治療手段の一つとして確立していく方向にあるように思われます。
現在、私は、理学療法士として大学附属病院での心臓リハビリテーション臨床業務と大学での理学療法学教育に従事させていただいております。本学会を通して得た情報や知見を臨床や教育の現場に活かしつつ、今後も社会に対して貢献できるものを一つ一つ積み上げていきたいと考えております。
最後に、本学会への参加にあたり研究開発調査助成を賜りました財団法人北海道心臓協会に心より厚く御礼申し上げます。