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NO.1

心肺機能、骨格筋を鍛え成人病を防ぐ
(1−1)


札幌市中央健康づくりセンター長 医学博士 西島宏隆

 運動すると気持ちがいい。特に自分の好きなスポーツはそうでしょう。例え運動中は少し苦しくても、ひと汗かいた後の爽快感を否定する人はあまりいないでしょう。体を動かすと精神的に良い。これだけでも運動のメリットは相当なものです。

 しかしそれだけではありません。例えばジョギングを始めたとします。週2回1カ月もすると何か体が軽くなります。少し体重も減っているかもしれません。でもそれだけではありません。心肺機能、骨格筋などが鍛えられて、日常生活の労作が楽になってしまったのです。あなたのエンジンがパワーアップされたのです。

 ところが比較的最近になって、運動はもっと大きなメリットがあることがわかってきたのです。それは成人病の予防です。このことは実はこの「すこやかハート」の55号(1996年)にくわしくのせてあります。もう一度とりだして読んでいただければ幸いです。成人病の中でも特に心筋梗塞、狭心症、突然死、心不全、不整脈などをおこす、いわゆる虚血性心疾患の予防に有効なのです。

 さて、このように運動が良いといわれるようになった根拠になっている研究は、どのようにして行われたのでしょうか。それは虚血性心疾患などの成人病の発生していないある健康な人の集団を対象に、主にアンケート調査によって運動習慣について調査します。

 その後毎年5〜10年間手紙などによって各人の健康状態、疾患の発生の有無について調査し、それをまとめると運動習慣と成人病と発生についての関係が明らかになるというわけです。

 このような膨大な疫学研究のほとんどは米国、ヨーロッパで行われたものですが、昨年の日本循環器学会では日本でも同様の研究が発表されています。

 私の勤務する札幌市中央健康づくりセンターは、1993年に札幌市民の健康づくりを支援するために設立され、成人病の危険因子の早期発見を中心にした健康診断、運動負荷心電図、体力測定とそれに続くカウセリング、運動フロアの提供とそこでの運動指導などの事業を行っています。運動習慣と成人病の発生・予防法についての追跡調査を行いデータがだせたらよいのですが、まだとてもそこまでいっていません。

 しかし運動習慣と成人病の危険因子との関係についてはデータが集積され、分析も進んでいます。これから6回にわたって「健康と運動」のシリーズを担当することになりましたが、これらの札幌市民の身近で貴重なデータを基にして健康への道を探ってみたいと思います。

 さて運動習慣があるとどのような体力ができるのでしょうか。どのような検査をすればわかるのでしょうか。

 歩く、走る、自転車にのる、などの下半身の大きな筋群を使って数分以上運動すると脈が増え息もはーはーします。このような運動をする能力が持久力、エアロビックな運動能力、心肺能力などとよばれています。すなわち、極端に言うと中長距離、マラソンなどの能力です。もっと日常レベルで言うと通勤、買い物などで息切れせずに歩く能力でもあります。この能力の低い人は成人病が多いのです。

 この能力はトレッドミル、自転車エルゴメータなどを使って目いっぱいの運動をしてみるとわかります。

 トレッドミルは動く歩道ですが、ベルトが前に進まず後ろに進むので遅れずに前に進まなければなりません。徐々にスピードも増し傾斜もついてきます。坂道、階段でしかも走らなければならなくなります。ついにはついていけなくなります。

 自転車エルゴメータは固定式の自転車です。エアロバイクなどと呼ばれているものです。こいでいると徐々にペダルが重くなってきて、ついにはある一定のスピードではこぐことができなくなります。そこでその人の最大限の能力がわかります。その目いっぱいの運動能力が最大酸素摂取量とよぱれています。

 このような運動では運動中に刻々と体内の栄養分を分解してエネルギーを生産してそれを使って運動しています。その時に酸素が十分供給できないと、この工場はうまくうごかないのです。実際にマスクを装着して使った酸素の量を測定するのが一番よいのですが、自転車エルゴメータの場合は目いっぱいまでやると、そこからかなり正確に予測できます。

 その人のめいっぱいまでやることを最大運動といっています。最大運動までやらずに止めてしまい、そこから最大を予測する方法もありますが正確さはかなりおちます。センターでは自転車エルゴメータを使い最大運動をやってもらい予測式から求めています。

 図1をみてください。これが推定最大酸素摂取量です。この値は男女、年齢によって異なるので、その標準値に対する比率(%)で示してあります。運動習慣がふえるほど明らかに最大酸素摂取量が上昇しているのがわかります。

 次に図2をみてください。これは善玉コレステロールであるHDLコレステロールと運動習慣との関係です。運動習慣がふえるほど明らかにHDLコレステロールが上昇しているのがわかります。HDLコレステロールの低い人は成人病のなかでも特に狭心症、心筋梗塞、突然死などをひきおこす虚血性心疾患が多いのです。

 低HDLコレステロールの原因は運動不足ばかりではありません。肥満、喫煙なども大きな原因です。いずれもそれぞれ成人病と関係のあるものばかりです。

 では運動の頻度だけではなく時間とか運動の種類はどうでしょうか。これらについてはまた次回に検討してみましょう。


  
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