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北畠 顕 北海道大学名誉教授・加納総合病院顧問
(2001〜2005北海道心臓協会副理事長)
創刊時から生活習慣病への先駆的な取り組み
機関誌「すこやかハート」100号記念まことにおめでとうございます。「すこやかハート」は 1984年11月に第1号が刊行されています。協会の事務局から送っていただいた資料で拝見すると上手に年をとるためのヒントを見出として順次、生活習慣病(成人病)を防ぐ食事、生活の中での工夫などが簡潔に解説されています。心筋梗塞・狭心症・脳卒中などは成人になってから多く発症する病気という意味で、当時はまだ成人病と言われていましたが最近では生活習慣病と呼びます。国も1997年の厚生白書から成人病を生活習慣病に呼び方を変えました。成人病から生活習慣病への変化は単なる呼称の言い換えではありません。予防や治療に私達自身が大きく係わらねばならない事になります。心筋梗塞・狭心症・脳卒中などは成人に達すると加齢により動脈硬化の進展などにより多かれ少なかれ患うのだとの一種のあきらめから、そうではなくて暴飲、暴食、喫煙などの悪い生活習慣を改める事によって防ぐことのできる病気なのだという発想の転換を意味します。20年以上前にすでにこのような先見性をもって道民への啓発活動を始められた事に深く敬意を表します。以後今日まで号をかさね100号に至っていますが企画・編集は第1号の精神が一環して継承されてきていると感じます。
「すこやかハート」の出版母体である財団法人北海道心臓協会は1981年に創設されています。2001年12月に発行された20周年記念特集号を拝見すると伊藤理事長が当財団の設立目的として「循環器疾患の予防、診断、治療、及び研究に関し必要な事業を行い、もって道民の健康、増進に寄与する」を挙げておられます。この目的に沿って協会とし て、伊藤記念研究助成、地方都市での健康特別講座開催、などの多くの事業がおこなわれ、機関誌「すこやかハート」も啓蒙活動の一翼を担ってきました。このような事業をおこなう団体は全国的にも東京にある日本心臓財団以外にはあまりないと承知しています。日本心臓財団は1970年に設立され、北海道心臓協会の兄貴分的存在です。当協会設立にあたってもずいぶんと参考になったと先輩からお聞きしました。重ねて申し上げますが、生活習慣病の予防のための啓発活動に携る当協会は全国的にも先駆的な北海道の誇りです。
1992年からは3月に札幌で全国的著名人をお招きし特別講演をお願いし、併せて循環器病に関する啓発的お話を北大・札幌医大・旭川医大から提供するというパターンが出来ました。この3月の講演会では循環器相談事業として3大学の若い医師・看護師がボランティアとして協力してくれ道民の皆さんにたいへん好評で、今も続けられています。北大循環器内科教授就任2年後の1994年の例会では笠谷幸生氏と不肖私が講演させていただいたのを鮮明に憶えています。例会は3月なので時に雪による交通障害が発生する事がありました。2003年に柳田邦男先生をお招きしていたのですが、吹雪ならず空港のシステムトラブルで大幅に講演が遅れ、もう一つの企画であった道民の心臓を守るためにどうすればよいかのパネルディスカッションを島本・菊池・北畠の3名で柳田先生到着まで急遽時間延ばしをした冷や汗ものの思い出があります。だらだらとした時間延長でなく聴衆の皆さんに結構楽しんでもらえたと後でお聞き して胸をなぜおろした次第です。
2003.9.14エコー・ウォーカソン2003札幌大会。
331名が完歩しました私の存じ上げない協会創立時のエピソードとして20周年特集号で初代副理事長高桑栄松先生が、当時を回想して菅野盛夫北大教授と尾山洋太郎先生が連れ立って自分を訪問し、循環器病の予防の重要性を訴えられことに共鳴し、協会創立に尽力され、経済界、医学会、メディア一体となった組織が誕生するにいたった経緯を紹介されており興味深く拝見しました。高桑先生は北海道大学医学部に全国に先駆けて循環器内科学講座を完全講座として当時の文部省に開設させた北大医学部長でもありました。北大循環器内科には初代教授として東大から安田寿一先生が1973年に就任されていました。理事長は創立当初から伊藤義郎氏が一貫して協会を献身的な奉仕の精神で指導しておられますが医学的立場から補佐する副理事長は高桑先生の後、安田寿一先生、飯村攻先生、北畠、その後菊池健次郎先生で今に至っています。私は2001年から2005年までを担当させて頂きました。
1991年12月に大阪大学から安田教授ご退官後に北大循環器内科2代目教授に赴任しました。周りの人々のやさしさに支えられてなんとかやってきましたが、副理事長として伊藤理事長を補佐する立場で協会に関与した期間は新たな緊張がともないました。学会がランチョンセミナーなど民間からの後援で運営するように協会の行事運営にも関連業界からの協賛を得るようにしたことなどは行事を充実させるのにすこし役立ったかなと思います。
楽しい想い出は一杯ですが2003年9月14日に開催されたエコー・ウォーカソン2003インジャパン札幌大会もその一つです。ウォーカソンはヨーロッパで盛んなチャリティ行事で財団法人日本心臓財団から当協会にお話がきました。私たちが協力して開催に至りましたがユニセフ協会と心臓財団からチャリティ金が参加者数と走行距離に応じて北海道心臓協会に寄贈されました。台風一過秋晴れの下スタート・ゴールが大通り公園、途中北海道神宮、札幌ファクトリーなどを経由する10kmのコースで盛大に行われました。道新にも報道されましたが多数の道民に御参加いただきました。救護班として北大循環器内科の諸君も協力してくれました。このイベントは札幌を皮切りに京都、横浜でも開催されました。道内のみならず全国手をつないで行えるような企画が今後も期待されます。
来年はG8サミットも洞爺湖で開かれます。道から世界への一層の情報発信と北海道心臓協会の益々の御発展を祈念します。
遠く離れた郷里奈良にて
