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NO.1

血圧を上げる
(1−1)


札幌医科大学教授 心理学 澤田 幸展


 「仕事や人間関係がうまくいかない」「家族や自分の健康や病気が心配」など、現代人は、あらゆる年齢層がさまざまなストレスを抱えているといって過言ではありません。過大なストレスが長期にわたって蓄積すると、心身に不健康を生じ変調をきたします。ストレスと心血管系のかかわりから、どのようにストレスに対処したらよいか、4回連載で考えてみましょう。

ストレスとは

 「ストレスが多い」、「ストレスがたまる」と、日常の挨拶言葉になってしまったストレス。しかし、現代社会を象徴するといわれるこの言葉も、その意味をきちんと捉えようとすると、なかなかやっかいです。何もかもが、ストレスのひとことで片付けられているようにさえ、見受けられます。

 ストレスとは、生活上の出来事である、と見なすこともできます。たとえば、結婚・昇進・失業などなど、です。こうした出来事に見舞われると、私達の心と体は、この新たな事態に適応しようとして、かなりエネルギーを使ってしまいます。

 また、ストレスとは、生活上の出来事そのものというよりも、これに適応しようとする人の「資産」が、間に合いそうにもない状態である、と考えることもできます。何かの出来事に直面しても、過去に似たような経験をしたことがあるとか、性格的に落ちついた対処ができるとか、悩みを聞いてくれる友人がいる、あるいは、お金で解決できるなど、その人の「資産」が十分間に合っていれば、ストレスとは感じられない、というわけです。

 似たような生活上の出来事に直面しても、人によってストレスになったり、ならなかったりしますが、その理由の一つは、このあたりにありそうです。

血圧

 オームの法則を思い出して下さい。「電圧=電流×抵抗」、でしたね。これと同じことは、循環器についても成り立ちます。つまり、「血圧=血流×血管抵抗」、なのです。血液が心臓から動脈に押し出されるとき、その押し出される血液の量と、受け取る側の血管の抵抗で、血圧は決まってきます。

 つまり、心臓から動脈へ、たくさんの血液が押し出されると、血圧は上がります。心臓は、安静のときでも、 1分間に約 70 回〜80回打っています。これが感情的に興奮などして、速く打つようになれば、押し出される血液は増えますから、血圧は上がってしまうというわけです。

 一方、血液が流れて行く動脈の側で、血管の抵抗が高くなると、やはり血圧は上がります。感情的に興奮したようなときには、動脈の血管も縮みますから、血圧はやはり上がることになります。

 こうした、心臓や血管の働き具合を背後から調節しているのが、自律神経(とくに、交感神経)やホルモンなどです。交感神経は、心臓の鼓動を速め、血管を収縮させます。また、腎臓の付近から分泌されるレニンと呼ばれるホルモンなども、血管の収縮に一役買って、血圧を上げる方向へ働きます。 

心臓や血管の働きに影響
 血圧は、 1日 24 時間、いろいろな理由で上がったり、下がったりしています。起きているか寝ているか、動いているか休んでいるかなど、活動の状態も大いに影響しますが、ストレスも馬鹿にならないほど、威力を発揮します。

 たとえば、「生活上の出来事>資産」という事態が、始まりであったりします。このとき、脳は、ストレスを感じているのです。その情報は、自律神経の働きを介して、あるいは、ホルモンの分泌を通じて、心臓や血管へ伝わり、その働きを変化させます。その結果、心臓から出る血液の量が増えたり、血管の抵抗が高まったりして、血圧は上がることになります。

 電話での会話にしろ、人前でのスピーチにしろ、人とのやり取りは、しばしば血圧を上げます。また、パソコンの前に座って仕事をするにしろ、ゲームをするにしろ、血圧は上がりやすいものです。テレビを見ているときも、ハラハラドキドキしていれば、血圧は上がり気味とみて、間違いないでしょう。もちろん、喧嘩をして興奮したりすれば、血圧の上がること、請け合いです。

 こうした、毎日のストレスで、血圧の上昇が繰り返されいるうちに、心臓の働きが悪くなったり、血管が硬くなったりするのでしょうか。あるいは、高血圧が発症したりするのでしょうか。いまのところ、確かな答は出ていません。ストレス以外の要因も、複雑にかかわってくるからです。それにしても、「血圧が上がる」とはよく言ったもので、ストレスの典型的兆候が、ここに現れているのです。


  
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