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高血圧の新しい診療指針、
「高血圧管理・治療ガイドライン2025」
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旭川医科大学 内科学講座 循環器・腎臓内科学分野
講師 蓑島 暁帆 氏
日本高血圧学会から出されている、高血圧の診療ガイドラインが2025年に改訂されました。高血圧の治療において重要な指針となりますので、ぜひ知っていただき、皆様の健康促進にお役立ていただきたいと思います。
1.高血圧とは
血圧とは心臓から送り出された血液が血管の壁にかける圧力のことです。この血圧が上昇している状態が高血圧であり、臓器や血管に負担がかかって、様々な病気の原因となります。
ガイドライン2025ではこれまでと同様に、診察室で測る血圧(診察室血圧)が140/90oHg以上、もしくは自宅で測る血圧(家庭血圧)が135/85oHg以上で高血圧と判断されます。高血圧は重症度に応じてT〜V度に分類されています。また正常血圧は診察室血圧で120/80oHg未満とされ、130〜139/80〜89oHgを高値血圧、120〜129/80oHg未満では正常高値血圧と定義され、それぞれ正常血圧と比べると、心血管病のリスクが上がることが報告されています。(図1)
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2.日本の高血圧の治療の診療状況と治療の重要性
高血圧は最も有病率の高い疾患の一つで、日本における高血圧患者は人口の1/3にあたる4300万人とされます。そのうち、治療を受けている患者さんは半分程度の56%、適切に血圧がコントロールされている患者さんは全体の27%に過ぎないと言われており、これは主要経済国の中で最下位レベルの低さです。(10のファクトB)
血圧のコントロールが重要な理由として、高血圧により脳卒中や心疾患、腎臓病などの病気になるリスク、死亡リスクが高くなり、1年間に17万人が高血圧が原因となる病気で死亡しています。(10のファクトA)
高血圧は脳卒中や狭心症や心筋梗塞などの冠動脈疾患(心臓を養っている血管が詰まる病気)の最大のリスク因子であり、血圧の上昇とともに脳心血管病のリスクは上昇します(図2)。高血圧によって血管に負荷がかかり、動脈硬化の進行などにより、血管の閉塞や破綻がおこると考えられます。
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さらに、高血圧は腎臓病や心不全、不整脈(心房細動)の発症リスクを上げることも知られています。また、中年期の高血圧は後の認知症のリスクであることも報告されており、正常血圧に比べ2.1倍多いと言われています。(10のファクト@)
以上のような疾患を予防し、健康を維持するために、血圧のコントロールは重要となります。
3.降圧治療と血圧のコントロールの目標値
ガイドライン2025では、血圧のコントロールの目標値を収縮期血圧130/80oHg未満、家庭血圧125/75oHg未満と定めています。高血圧患者さんの降圧による、心血管病の予防効果は様々な臨床試験で報告されており、年齢に関わらず上の血圧を130oHg未満、下の血圧を80oHg未満まで下げると、それ以上の血圧に比べて、脳卒中や心臓病が少なくなります。(10のファクトD)一般的に収縮期血圧を10oHg下げると、心血管病のリスクが約20%減少、脳卒中が約35%減少、全死亡が約10%減少すると言われています。(10のファクトC)
治療は生活習慣の改善と、降圧薬による薬物療法が中心となります。初診時に正常血圧以上だった場合、通常は5項で示すような生活習慣の改善につとめます。多くの高血圧患者さんでは、生活習慣の改善だけでは十分な降圧が得られないため、薬物療法が必要となります。高血圧の重症度や年齢、性別、合併する疾患などから算定される、心血管疾患の発症リスクが高い場合には、早期から薬物療法の適応になります。ガイドラインで第一選択薬に推奨されている主要な降圧薬は、血圧低下による心血管病のリスク低下のエビデンスのある薬剤となっており、効果が不十分であれば、複数の降圧薬を併用します。多くの場合2剤以上の併用が必要となります。(10のファクトG)
高血圧の治療薬は一般的に比較的安価で安全であり、副作用よりも血圧を下げることによる利益の方が大きいです。(10のファクトH)
4.家庭血圧測定のすすめ
家庭血圧は診察室血圧よりも信憑性、再現性が高く、脳心血管病や臓器の障害のリスクとの関連が強いことが、多くの研究から報告されています。このため、ガイドラインでは家庭血圧を重視し、家庭血圧と診察室血圧に差がある場合には、家庭血圧を優先するとしています。(10のファクトI)
家庭血圧の測定方法は以下の通りです。(図3)
- 計測のタイミング1〜2分の安静の後に計測します。朝晩の2回、朝:起床後1時間以内、トイレに行った後、朝食前夜:就寝前
- 計測回数1回につき2回計測し、平均をとる。1回測定の場合はそれを採用する。
- 計測時の姿勢
背もたれ付きの椅子に座って、足は組まない。腕は心臓の高さ。
上腕(肘の上)で計測する血圧計が推奨
静かな部屋で計測し、会話はしない。![]()
5.生活習慣の改善
高血圧は生活習慣病であり、生活習慣の改善はまず行うべきです。以下の生活習慣の改善で血圧の低下が期待できます。(10のファクトE)
1)食塩制限
食塩の過剰摂取が高血圧に関連すること、減塩により血圧が低下することは広く知られています。ガイドラインでは食塩摂取量を6g/日未満にすることが推奨されています。日本人の平均摂取量は10g/日とされ、世界の中でも多く、意識的に塩分の摂取を制限する必要があります。食品の塩分含有量を図4に示しますので、参考にしてください。(10のファクトF)
減塩のコツ
- めん類の汁やスープを残す
- 漬物は控える
- 味噌汁は1日1杯以内
- 調味料は食品に直接かけないで、少量ずつつける
- 低塩タイプの調味料を使う
- ハム、ソーセージなどの加工品は控える
- 酢や香辛料、香味野菜(ショウガ、にんにく、しそ、ねぎ)などを積極的に利用する
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2)適正体重の維持
肥満は高血圧発症の危険因子として知られています。肥満の判定はBMIという指標を用い、BMI=体重(kg)÷身長(m)2で計算され、25以上で肥満と判定します。この10年間で男性の肥満者の割合は増加していると言われており、特に30〜69歳の男性では30%以上が肥満とされます。
減量による高血圧に対する効果は、体重-1sにつき、血圧が約1oHg下がるとされ、適正体重の維持が推奨されています。
3)運動
運動療法による血圧低下効果も広く知られており、平均すると5oHg程度の低下が期待できます。ガイドラインでは、ウォーキングのような有酸素運動と、筋トレのようなレジスタンス運動を併用することが推奨されています。
有酸素運動では、ウォーキング(散歩)や自転車、プールでの水中歩行などが良いでしょう。少し汗ばむ程度、会話ができるくらいの運動を、1回10分以上、1日30分以上が目安となります。レジスタンス運動は、筋肉に負荷をかける筋力トレーニングで、スクワットや椅子からの起き上がり、かかと上げなど、低負荷のものを1セット10回程度を2セットを目安に行うのが良いでしょう。
4)節酒
習慣的にアルコールを摂取すると血圧が上昇することが知られており、飲酒量に伴い血圧が上昇すると言われています。また脳出血などのリスクも同時に高まります。飲酒を制限した場合、1〜2週間で血圧が低下すると言われており、3oHg程度の降圧が得られます。
高血圧の患者さんでは、男性でビール中瓶1本(500mL)程度、焼酎半合、ウイスキーダブル1杯、ワイン2杯以下、女性ではその半分以下に制限することが勧められます。
5)禁煙
喫煙により、血圧が上昇するとともに、心血管病、脳卒中のリスクが上昇します。禁煙により脳心血管病の発症や、死亡の抑制が証明されており、禁煙は強く推奨されます。
6.まとめ
日本高血圧学会では国民の皆さま向けに、ガイドラインに基づく正しい知識を、「高血圧の10のファクト」として取りまとめています。今回の冊子の内容のまとめにもなっておりますので是非ご参照いただければと思います。高血圧をしっかりコントロールし、高血圧をもとに発症する、心血管病を防ぎ、健康を維持しましょう。
「高血圧の10のファクト」
- @高血圧は、将来の脳卒中・心臓病・腎臓病・認知症の発症リスクを高める病気です
- A日本では、1年間に17万人が高血圧が原因となる病気(脳卒中や心臓病)で死亡しています
- B日本の血圧コントロール状況は、主要経済国の中で最下位レベルです
- C上の血圧(収縮期血圧)を10oHg下げると脳卒中・心臓病が約2割減少します
- D高血圧の人では、年齢に関わらず、上の血圧130oHg未満、下の血圧80oHg未満まで下げると、それ以上の血圧に比べて、脳卒中や心臓病が少なくなります
- E生活習慣の改善(減塩、運動、肥満の是正、節酒など)で血圧は下がります
- F日本人の食塩摂取量は10g/日と世界の中でも高く、高血圧の人は6g/日未満にすることがすすめられています
- G目標の血圧レベルに達するために、多くの高血圧患者では血圧を下げる薬が2種類以上必要です
- H血圧を下げる薬は、安価・安全で効果があり、副作用よりも血圧を下げる利益の方が大きいことがほとんどです
- I日本は家庭血圧計が普及しており、家庭での血圧測定は高血圧の診断と治療に役立ちます

