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NO.26 |
不整脈、といわれたら
市立札幌病院循環器科 加藤 法喜さん
不整脈が有する様々な問題や特徴をQ&Aの形式でご紹介します。
Q.脈、脈拍とは?
A.心臓は24時間拍動を続けて、体が必要とする血液を循環させています。左心室からは呼吸によって酸素を吸収した赤い血液(動脈血)が全身に送られ、右心室からは全身の組織・臓器で酸素が消費された黒っぽい血液(静脈血)が肺に送られます。心臓の拍動(心拍)を胸で触れることができますが、表在性の動脈では心臓から送られてくる血液によって生じる圧力(血圧)の変化を脈拍として触れることができます。
Q.脈を触れやすい表在性の動脈とは?
A.皮膚の表面に近い所にあるために脈拍を触れやすい動脈で、その代表的部位は脈を診る(検脈)ことが多い手首(とう骨動脈)、肘の内側(正中動脈)、首(頸動脈)、股の付け根(大腿動脈)などがあります。Q.不整脈とはどういう脈のこと?
A.脈拍が突然とぎれたり(結滞または欠損)、一拍一拍の間隔がいつもバラバラであるなど脈拍が不規則になる場合と、脈拍数が異常に多い場合や、逆に異常に少ない場合を不整脈といいます。Q.不整脈があるかどうかは脈をとると分かりますか?
A.不整脈の出現頻度が大きくて、24時間に亘ってほぼ均等に見られる場合や、常に不整脈の状態にある場合は、短時間の検脈で分かる可能性が大ですが、不整脈の出現頻度が小さい場合は脈をとるだけでは分からないことも多いです。Q.不整脈があるかどうかは症状で分かりますか?
A.不整脈の種類によっては、その瞬間から心臓の血液を送る効率が極度に低下して、めまいや失神、冷や汗や呼吸困難を生じるものがありますが、そのようなものを除くと、症状の有無・程度には大変大きな個人差があります。つまり、全く心配のない不整脈であっても、自覚症状(いわゆる動悸)が非常に強くて「いつ倒れるか、いつ死ぬか」と毎日毎日が生きた心地がせずにノイローゼ状態になってしまうことがあります。
Q.症状のある不整脈は症状のない不整脈より危険ですか?
A.症状の有無と危険性は、基本的には関係ありません。症状が強くても全く危険性のない不整脈がたくさん有りますし、症状が全く無くても大変危険な不整脈に変身するものもあります。また、症状がある方は病院に行って診てもらう機会が多くなりますので、むしろ安全性が高くなるともいえます。Q.不整脈は稀な現象(異常)ですか?
A.不整脈は決して稀な現象ではありません。症状が無かったり出現頻度が小さいなど、また、健康診断を受ける機会や病院に行く機会があまり無かったりなどしますと、不整脈があっても気付かれない(診断されない)ままになってしまいます。単に不整脈が有るか無いかということでは、国民全体の3/4以上の方に不整脈が有るといわれておりますし、仮に24時間以上の全ての心拍を心電図(ホルター心電図)に記録しますと、この数字は限りなく100%に近づくとも考えられております。
Q.心臓に異常があるから不整脈を生じるのですか?
A.心電図を長時間観察・記録すると、ほとんどの人に不整脈が見つかることから分かりますように、不整脈があるからその原因となる心臓病が必ず有るとは全くいえません。また、治療を必要としない不整脈がほとんどです。ただ、重い心臓病を患っている人では不整脈を合併する頻度が大で、持続時間も長い傾向にあり、不整脈のために心臓の働きが損なわれ、時には死亡の原因となることがあります。一方、心臓には何の異常も無さそうな人が、不整脈によって突然死することが稀にあります。Q.不整脈は命に関わるものですか?
A.ほとんどの不整脈は命に関わることがなく、そのために心臓が弱くなることも無い良性の性質を示します。良性の不整脈は、症状の有無に関わらず、基本的には不整脈を抑制する薬(抗不整脈薬)を必要としませんし、生活上の制限も不要です。しかし、中には心臓突然死の原因となる悪性の性質を有する不整脈や、長時間持続することにより心臓の働きを弱めて心不全の原因になったり、悪性の不整脈を誘発・誘導するものもあります。Q.不整脈、といわれたら?
A.不整脈が有るからといって、それが直ぐ病気に結びつくものではありません。むしろ正常の心臓にごく普通に見られる現象です。大事なのは、(1)自覚症状の有無に関わらずその不整脈が悪性の性質を持っていないかということと、(2)その不整脈自体は一見良性の性質ではあるが、今後悪性の不整脈に変わる可能性がないかということ、そして(3)心臓弁膜症や狭心症、心筋症や心臓肥大などの心臓病を背景に出現している不整脈ではないかということです。この3つ全てが否定されましたら、あなたの不整脈は問題ありませんし、あなたの心臓は正常です。万が一、3つの内の1つでも当てはまりましたら、充分な治療を受けて、転ばぬ先の杖として下さい。そのために、「不整脈」といわれたら、先ずは心臓の専門医に相談して下さい。そして安心して生活して下さい。

