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NO.12 |
発作性上室性頻拍に悩んでいます
旭川医科大学 第一内科講師 川村祐一郎
Q.発作性上室性頻拍に悩んでいます
37歳の主婦です。何度も発作を起こし、3年前に病院で検査を受けたところ、「発作性上室性頻拍症」と診断されました。死に至ることはないと言うことで安心していましたが、ここ1年で発作の時間が3時間から5時間になり、とても苦しい思いをしています。かつて受けた処置は、3時間ほど点滴をして、それでも止まらない場合には、瞬間的に心臓を止めてという方法でした。心臓を止めてという形が怖くて、結局、家で発作が止まるのを待っている状況です。再度、検査を受けた方が良いのでしょうか?
A.薬で予防か、対症か、根治か発作性上室性頻拍は、確かに命にかかわる不整脈ではありませんが、一度起こるとなかなか止まらないことが多く、日常生活に支障を来たします。特に、あなたのように発作の回数が多い方の場合は大変だと思います。
そこで治療が必要となるわけですが、治療のポイントは、
(1)薬で発作を予防する
(2)発作が起こったら止める
(3)一生発作が起こらぬよう根治する、
の3点にまとめられます。(1)は、毎日ある種の薬(主に「抗不整脈薬」と呼ばれるものです)を飲むということです。これで発作が全くなくなるか、ゼロではないにしても回数がぐっと減る(例えば1年に1回とか)ようならば、治療としてはかなりうまくいっていると言えます。ただ、毎日内服しなければならない煩わしさと、時に薬の副作用が出ることがあるのが難点と言えば難点です。
(2は、あなたも一部経験されていると思いますが、息こらえ、冷たい水に顔をつける、発作の時だけある種の薬をのむ(これは即効性に欠けます)、病院へ行って注射で止めてもらう、といった行為のことです。質問にあった「心臓を止める」というのは、注射薬の中に、確かに2〜3秒ほど心臓を止めるものがあるので、そう言われたのでしょう。永遠に止まるという意味ではありません。非常に発作回数の少ない場合、これだけを治療手段とするのもよいと思いますが、回数が多い方の場合は大変です。
そこで、(3)根治についてです。近年では、全身麻酔もせず、体にメスを入れずに、カテーテルという細い管を心臓の中に入れ、この先端からの60〜70度位の熱で不整脈の根源を熱変性させて、根治するという術が発達しています。この術をカテーテルアブレーションといいます。
発作性上室性頻拍は、不整脈の根源がかなりはっきりした、心臓の中のある狭い範囲に限られている不整脈なので、カテーテルアブレーションのよい適応です。つまり、心臓全体を殆んど傷めることなく、かなりの確率でこの方法で根治させられます。もちろん、成功率は100%ではないし、危険性についても、何せ心臓に管を入れる術だけに、0%ということはないですが、頻拍発作に悩んでいる方にはぜひ考えておいて頂きたい治療だと思います。
そこで、詳しいことを相談するために、実際にこれを行っている病院の専門医を、一度受診することをお勧めします。

