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NO.6 |
北大医学部循環器内科 富田 文
Q.ワーファリンってどんな薬ですか私の友人は数年前に人工弁置換手術を受け、それ以来ワーファリンという薬を服用しています。心臓の具合は良いようなのですが、ワーファリンについての血液検査や日常生活・食事の注意など、いろいろ大変そうです。ワーファリンというのは、どのような薬なのでしようか。
A.体内で血液が固まるのを防ぐけれど注意が必要
ワーファリン(Warfarin)は抗凝固薬と呼ばれ、血液のかたまり(血栓)ができるのを予防したり、治療する薬です。普通の状態では、血液が身体の中でかたまる(凝固する)ことはありませんが、血液の流れや血管が障害された場合、あるいは身体の中に人工弁や人工血管などの異物が存在する場合には、血液が本来持っているかたまる性質(凝固能)が高進して、血栓ができやすい状態になります。
ワーファリンは肝臓でのビタミンKに依存した凝固因子の合成を阻害して抗凝固作用を発揮します。
ワーファリンの効果は個人差が大きく、血液検査によって一人ひとりに最も適した投与量を決める必要があります。投与量が多すぎると出血(鼻・皮下・歯肉出血、血尿など)の危険が高くなり、少ないと十分な治療効果が得られないことになります。このため定期的に受診して、必ず主治医の指示通り服薬することが大切です。
ワーファリン効果の指標として、日本ではトロンボテストがよく利用されていますが、最近、国際的なワーファリン治療の標準的指標として、プロトロンビン時間のINR(International Normalized Ratio)という表記法が提案され、日本でもINRに基づいた投与量の決定が行われるようになってきました。
ワーファリン服用時にはご質問にあるように、日常生活や食事で気をつけなければならないことがいくつかあります。食事に関しては、ビタミンKを多く含む食物の摂取は注意が必要で、納豆とクロレラは禁止してください。緑色野菜などは、1日量が過量にならない程度の摂取であれば大丈夫です。
また、次のような場合には、必ず主治医に相談するようにしてください。
(1)手術や抜歯をする場合
(2)新しい薬を服用したり(特に解熱鎮痛剤、鎮静剤)、いままで服用していた薬を中止する場合
(3)妊娠を希望する場合(ワーファリンには催奇形性があるので、ワーファリン服用中の妊娠は原則として禁止です)。最後に、ワーファリン治療を受けている方は「抗凝固療法手帳」(診断名やワーファリン使用量、治療施設名などが記入された手帳)をお持ちになっていると思いますが、受診時(他院、他科を含む)はもちろんのこと、不慮の事故や病気に備えて外出時には常に携帯するように心がけてください。

