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NO.5 |
北海道大学循環器内科 講師 甲谷哲郎
Q.狭心症予防の貼り薬ってどんなもの?
私は狭心症と診断され、近くの医院から貼り薬をもらっています。いつも心臓の上に貼っているのですが、かゆみがひどくて少し困っています。とくに冬は皮膚が乾燥するためか症状が強く出るようです。しかし、大事な薬と思い我慢して貼っています。この薬は一体どんな薬なのでしようか。説明してください。
A.皮膚から徐々に長時間薬の成分が吸収される
狭心症に対する代表的な薬剤には、硝酸薬、力ルシウム拮抗薬、β(ベーター)遮断薬の3種類があり、狭心症のタイプや重症度に合わせて、これらが使い分けられています。
硝酸薬は、冠動脈を拡張する、冠動脈の痙攣(けいれん)を抑える、全身の静脈系に血液を貯えて心臓へ戻る血液を減らして心臓の負担を少なくする、などの作用で狭心症発作を抑えることが出来ます。この硝酸薬にはニトログリセリンと硝酸イソソルビドがあり、現在、これらには舌下錠、錠剤、軟膏(なんこう)、テープ剤、注射剤など多くの種類の剤型が利用可能となっています。
ご質問の貼り薬は硝酸薬を含んだテープ剤で、皮膚から薬剤成分が徐々に吸収されるため効果持続時間が長いという特徴があります。すなわち、1枚の貼付で通常の例では24時間効果が持続すると言われています。なお、効き目がはっきりと現れるのは貼付後1時間ぐらいとなっていますので、発作が起きたときに貼っても間に合いません。テープは発作予防のために使われるものですので、この点をよくご理解ください。
また、はがすと効果はすぐに消失することもテープ剤の利点の一つですので、貼付後たまたま血圧が下がったときなどは、はがすことにより回復します。さらに、本剤は、経□摂取が不可能な術後の患者さんなどでも大変有用です。
ただし、ご質問の方のように皮膚の弱い方には発赤、かぶれが生じるという欠点があります。しかし、貼付する部位を胸部、背部、腹部、下肢、上肢などと毎日場所を変えることにより、ある程度防止できます。
貼付する場所は心臓の上だけと勘違いされている方がいらっしやるようですが、皮膚であればどこからでも吸収されますので、この点は十分ご注意ください。ただし、ご質問のように皮膚が乾燥していると、かゆみは強く出るので、その場合は、はがした後にかゆみ止めの軟膏を塗布するなどで対応してください。
しかし、皮膚が敏感でどうしてもテープが不向きな方もいらっしゃいますので、そのような方は遠慮せずに主治医にご相談ください。テープと同等な効果を有する徐放錠(ゆっくり吸収される錠剤)がありますので、これに変更されると良いでしょう。
(使い方の注意)
人によっては、貼ったところが赤くなったりすることがありますが、貼り替える時に前回と同じ場所を避けて貼ると皮膚への刺激が少なくなります。 はがした後、粘着剤が残る場合は、ベビーオイルなどでふくと、とれやすくなります。

