![]() |
NO.2 |
斗南病院循環器内科長
尾山洋太郎
Q.早朝、胸の裏側に灼熱感 耳の付け根にうずき
51歳男性、高校教師。今年2月末の早朝、胸の裏側の灼熱感を覚え目をさましました。布団の中でじっとしているうちに数分で楽になりそのまままた眠ることが出来ましたが、以来同様の事が何度かあり、あごや耳の付け根のうずきや、脈の乱れを併せて感じたこともあります。日中は全く元気ですし、職場の定期検診でも血圧や心電図の異常を指摘されたことはありませんが、このまま様子を見ていてよろしいものでしょうか。
A.異型狭心症の疑いも 不整脈の合併も多い
ご質問の状況から判断しますと「異型狭心症」が考えられます。
生涯拍動し続けるという仕事のために、心臓の筋肉は冠動脈からの十分な血液の供給を必要としています。この血液供給が何かの理由でうまくいかず心臓の筋肉が酸素不足にさらされたときに「胸の痛み」という信号で現れるのが狭心症です。
酸素不足の原因の多くは、冠動脈が狭くなつたり、必要に応じて広がったりすることが出来なくなる冠動脈硬化症です。このため、運動などでよりたくさんの酸素を必要とするときこれに迫いつけず、心臓の筋肉に酸素不足を生じるのであり、労作性狭心症と呼ばれています。
一方、全く正常な、あるいは動脈硬化の程度がきわめて軽い冠動脈でも、突然けいれんを起こし、結果的に同様の酸素不足を心臓の筋肉に生じることがあります。このようなけいれんは自律神経系のバランスが変化する夜半、早朝に起こりやすいのですが、労作性狭心症の場合とは違い、たくさんの酸素を必要としていないにもかかわらず心臓の筋肉に酸素不足を来すのであり、異型狭心症と呼ばれています。
異型狭心症の正しい診断には、発作中の心電図所見が大切であり、このためにテープレコーダーを利用した長時間心電図記録が行われています。異型狭心症では、症状を感じない程度の軽い発作が繰り返し起きていたり、不整脈を合併したりすることがしばしばですが、このような変化もこの方法で確認できます。発作を繰り返すうちに心筋梗塞を起こしたり、重い不整脈のため心臓のポンプとしての働きがうまく行かずに急死する、などの深刻な問題につながることがままあります。放置することなく、早めに専門医を受診されるようお勧めします。

