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NO.32-5 |
狭心症の検査について
Q. 1 ヶ月程前に左肩から鳩尾にかけ起床時に痛み、かかりつけの内科で診察。24時間心電図検査でも異常有。循環器専門の病院に行き造影CT検査を受けることを勧められるが、更年期に入ってからパニック障害になり検査に対して恐怖感が起こり、未だ検査ができずにいます。精神的に負担の軽い検査はないでしょうか?
A.【狭心症について】
24時間休むことなく働く心臓に、血液を介して酸素とエネルギーを供給しているのが冠動脈です。狭心症とは、冠動脈を流れる血液が絶対的にあるいは相対的に不足して、心臓が必要とする量の酸素とエネルギーを供給できなくなり、一過性に(発作性に)心機能障害を生じた状態をいいます。多くの場合、発作中の心電図に特有の変化が見られます。【狭心症の原因】
心臓への血液の供給が不足する原因には大きく分けて2 つあります。
@労作性狭心症:冠動脈の動脈硬化症により冠動脈の内腔が狭くなり(冠動脈狭窄といいます)、安静時(あまり体を動かしていない時)には足りている血液の供給が、労作時(体を動かした時や精神的に強く興奮した時など)に、酸素とエネルギーの需要が増した心臓に十分な血液が供給されないことによる狭心症です。
A冠攣縮性狭心症:冠動脈の動脈硬化症がほとんど無いか、あっても軽度であるため、日常生活やスポーツなど激しい運動をした時にも、心臓への血液が不足することがありませんが、一時的に冠動脈が強く痙攣状に収縮して内腔が狭くなるために、血液の供給が大幅に減少することによる狭心症です。一般的には夜間の睡眠中や、起床前の早朝に起こることが多いという特徴を示します。
* 実際の狭心症では、多かれ少なかれ両方の性質を有することが多いようです。【狭心症の症状】
狭心症の症状は代表して「胸痛」というように表現されることが多いのですが、個人差が比較的多くみられます。
前胸部絞扼感、前胸部圧迫感、胸部の灼熱感、前胸部の重苦しさ、喉の圧迫感、下顎痛(歯が痛い)、上肢の痛みやシビレ、心窩部痛(胃が痛い)など多彩ですが、これらの症状が全く無い場合(無症候性心筋虚血)も決して少なくありません。【狭心症の診断】
症状が多彩であることから自覚症状だけでは確定的に狭心症であると診断(確定診断)することは困難です。そのために、心電図、負荷心電図、ホルター心電図、心エコー図検査、心筋シンチグラムやCTなどを行い、発作時の特有の変化(異常)が見られるかどうか、冠動脈に動脈硬化性の異常があるかどうかを検討して、狭心症の診断を進めていくことになりますが、確定診断には至らないこともあります(補助診断)。
狭心症の原因は冠動脈の異常(動脈硬化性や冠攣縮性など)ですので、直接的には細いカテーテルと造影剤による冠動脈造影により、確定診断と重症度診断が可能となり、より正しい治療方針(大きく分けて、薬物治療、内科的血管内治療と外科的治療)が決まります。ご質問に対する回答
ご質問の内容を拝見しますと、「起床時の左肩から鳩尾にかけての痛み」であり、「ホルター(24時間)心電図で異常がみられた」とのことですので、狭心症である可能性は否定できません。
ただし、狭心症の説明で申しあげましたように、症状からだけでは狭心症と断定できませんし、実はホルター心電図を含む心電図の検査では偽陽性も偽陰性もあります。また、狭心症だとしても重いか軽いか(重症度)は診断できないのが通例です。
「精神的に負担の軽い検査はないでしょうか?」とのことですが、確定診断に至らなくても、少なくとも重い狭心症である可能性が小さければ、とりあえずはお薬による治療で経過を見て判断するという方法(診断的治療)もあります。
そのためにもまずは信頼のおける心臓の専門医と良好な医師-患者関係を築くのが第一であると考えられます。
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