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NO.32-3 |
薬剤性失神について
Q. 薬剤性失神をきっかけとして、例えばある時間が経過した後に心電図(仰向け)をとっても異常はでないのでしょうか?ホルター心電図、チルト試験等でしかわからないのでしょうか?
A. 失神とは一過性に意識を失う発作で、一時的に脳の血流が低下するために起こり、(多くの場合速やかに)自然に回復するものです。薬剤性に限らず、通常失神を契機として新たに心電図変化が生じることはありませんので、ご質問の趣旨は「回復後の心電図では、失神の原因はわからないものか?」ということだと解釈し、回答させていただきます。
失神の主な原因は、@起立性低血圧(自律神経障害、薬剤、アルコールなどにより、立ち上がった際に急に血圧が低下する)、A神経調節性失神(自律神経の異常により、長時間の立位や種々のストレス、あるいは排尿などの特定の状況が誘因となって、血圧低下や脈拍数の減少が起こる)、B不整脈(脈拍が極端に遅くなる、あるいは速くなる)ですが、全て薬剤により誘発されることがあります。他に心疾患(心筋疾患や弁膜症などで急に血圧が下がる)や脳血管障害が原因となることもありますが、多くはありません。また、よく似た意識低下を起こす病気の一つに、「てんかん」があります。
起立性低血圧や神経調節性失神の一部、てんかんによる意識消失では、発作中の心電図でも異常はみられません。その他の失神でも、元々心疾患がなければ普段の心電図に異常を認めることは多くありません。質問者がどのような失神が薬剤により誘発されたのかがわかりませんが、不整脈の場合でも発作時以外の心電図は正常であることが多いのです。
ただし、薬剤により不整脈が誘発された場合には、普段の心電図にも心臓内の電気的な伝わりが悪い危険な不整脈が出やすい波形になっているなど、原因につながる異常を認めることがあります。
なお、ホルター心電図(24時間連続記録)は、不整脈が疑われる場合によく行われる検査ですが、記録中に失神発作が起こらなければ確定診断は困難です。このため現在では、月〜年単位で発作時の記録が可能な、一時的皮下埋め込み型の心電計が活用されています。チルト試験は、神経調節性失神が疑われる場合に行う特殊な検査(誘発試験)です。
薬剤性失神と診断されたのであれば、とにかく原因がわかったということですから、現在の心電図異常にはこだわらなくても良いと思います。

