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糖尿病
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札幌医科大学 医学部第二内科 小原 史生
糖尿病の原因糖尿病とは、血液中のブドウ糖が病的に増えた状態のことです。ブドウ糖が多少増えただけでは強い自覚症状を伴うことはほとんどありませんが、これを放置すると動脈硬化を進行させ、結果として狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患や脳卒中の原因になります。
また成人失明の原因の第1位が糖尿病による網膜症であり、慢性腎不全により血液透析に導入される症例の30%が糖尿病性の腎症であるといわれています。
厚生省の調査によると、医療機関で治療を受けている糖尿病の患者さんは、国内で220万人います。ところが最近の調査では、糖尿病の患者数は約690万人と推定されています。
この数字の差から、糖尿病であることに気付かないでいる人や、あるいは気付いていても治療をしないでいる人がいかに多いかがわかります。
通常、血液中のブドウ糖の量は適正な値に保たれていますが、何らかの原因でバランスが崩れると糖尿病となります。
糖尿病の原因は大きく分けて3つあります。一つは遺伝、もう一つは自己免疫性疾患やウィルス感染症、内分泌性疾患などの他の疾患が原因のこともありますが、最も重要なのは生活習慣です。
具体的には以下のような生活習慣をもつ人は糖尿病になりやすく注意が必要です。すなわち
1.偏食、過食、間食のとりすぎ
2.お酒の飲み過ぎ
3.運動不足
4.喫煙、ストレス
です。
尿病の分類と診断
糖尿病の治療糖尿病の診断は血液を採って血糖を検査して行います。従来の糖尿病の診断は、経口ブドウ糖負荷試験での血糖値により行われておりましたが、日常診療や疫学調査における簡便さから最近新しい基準が提案されています。血液は空腹時に採血しなければなりませんが、空腹時血糖126r/dl以上を糖尿病と判定してよいといわれております。
ブドウ糖はそもそもは生体の中で重要な役割を果たしており、身体の活動を支える重要なエネルギー源です。しかし、これが血液中に過剰に存在すると動脈硬化を促進してしまうので問題なのです。
糖尿病の病態の特徴は、膵臓から分泌されるインスリンというホルモンの効果の絶対的あるいは相対的不足による高血糖状態の持続であります。糖尿病は、インスリン依存性の点から1型(膵β細胞破壊による絶対的インスリン欠乏)および2型(インスリン抵抗性とインスリン分泌不全による相対的インスリン欠乏)糖尿病に分類されます。
その他の特殊な病型として自己免疫性疾患やウィルス感染症、内分泌性疾患などの疾患が原因となり2次的に発生してくるものや、妊娠糖尿病などのタイプがあります。
では糖尿病の治療はどうすれば良いのでしょうか。糖尿病の原因はいくつかあると言いましたが、ほとんどの糖尿病で最も重要なのは生活習慣であり、最近糖尿病は生活習慣病であるとさえ言われております。
したがって、その治療は薬物療法の前にまず食事、運動などの生活習慣の見直しが必要です。偏食、過食、間食のとりすぎや、お酒の飲み過ぎ、運動不足、また喫煙、ストレスは大敵です。
特に食事の内容の見直しが大切です。
1.糖質(炭水化物)を摂りすぎない(一日200〜300g程度)
2.食物繊維をたくさん摂る。食物繊維は糖代謝や脂質代謝の異常を改善し、便通もよくします。
3.3食をきちんと食べる。
1日2食ですませると間食が増え、かえって1日の摂取カロリーが増えてしまいます。また、お酒はストレスを解消し生活に潤いを与えるかもしれませんが、摂取過剰だと急激に血糖や中性脂肪を上昇させ、糖尿病の原因になります。1日に摂るアルコールはビールなら大瓶1本、日本酒なら1合程度に制限しましょう。
運動は激しい運動を短時間するのではなくて、軽めの運動(マイペースのジョギング等)を継続することが重要です。毎日ジョギング等の有酸素運動を継続することで肥満の防止、糖尿病、血清脂質異常、高血圧のコントロールに役立つと言われています。
2〜3ヵ月の食事療法、運動療法を行っても糖尿病が持続する時、糖尿病のタイプに応じて治療薬が処方されます。(ただし、脳卒中や心筋梗塞などの動脈硬化性臓器合併症の既往のある場合は、最初から薬物療法が行われることが多いです。)治療薬は安全性が確認されたものが使用されていますが、肝臓機能障害、腎臓機能障害のある人や薬物の過敏症のある人、妊娠している人は副作用が心配されますので主治医と良く相談し治療法を選択する必要があります。

