![]() |
NO.2 |
狭心症、といわれたら
国立病院機構北海道がんセンター循環器科 竹中 孝さん
狭心症といわれた方への疑問にお答えします。
Q.狭心症とはどのような病気ですか?
A. 心臓は全身に血液を送り出すポンプのようなもので、特殊な筋肉(心筋)でできています。心筋自身に酸素を十分含んだ血液を送る血管を冠動脈といい、心臓の表面を冠のように覆っています(図1)。運動などにより心筋の酸素の必要量が増えた際、冠動脈に狭いところがあると血流が制限され、心筋が酸素不足になります。この時に起こる胸が締めつけられるような痛み、圧迫感などが狭心症です。これとは別に冠動脈の強いけいれんが原因で起こる狭心症もあります。
Q.冠動脈が狭くなる原因は何ですか?
A.冠動脈に動脈硬化が進むと血管の内側にコレステロールなどが沈着して壁が厚くなり、ついには内腔(血液の通りみち)が狭くなります(図1)。動脈硬化は年をとると誰にも起こりますが、それが病気にまで進む詳しいしくみはわかっていません。ただし、冠動脈に病気を起こしやすくする原因がいくつか知られており、冠危険因子といいます。代表的なものとして高血圧・高脂血症・糖尿病・肥満・喫煙・ストレスなどがあり、いずれも食事や運動などの生活習慣が、その発症・進行に関与します。
Q.狭心症と心筋梗塞とは違うのですか?
A.冠動脈の血流が不十分な段階では胸痛(狭心症)が起きても安静にしていると治まり、心筋は傷みません。しかし、病気の場所に血の塊(血栓)がついて内腔を塞ぎ、血流が完全に途絶えると、心筋は傷害されてしまいます。これが急性心筋梗塞で、危険な不整脈や血圧低下などの合併症によって命に関わることがあります。
Q.では、狭心症では危険はないのですか?
A. 長年治療されていて、症状に変化がなく、定期的に検査を受けている方はそれほど心配ありません。発作が初めて起こった場合や以下のような徴候があると、突然死や心筋梗塞を起こす危険があるので早めに医師に相談して下さい。
(1)しばらくなかった発作が再発してきた
(2)以前よりも軽い労作で発作が起こる
(3)発作の回数が増えた
(4)痛みが強くなった
(5)硝酸薬の効き目が悪くなった。Q.狭心症ではどのような検査をしますか?
A.診断を確定し、治療方針を決定するため、運動負荷心電図・ホルター心電図・心筋シンチグラム・CTスキャン・MRI検査・冠動脈造影などを行います。冠動脈造影は股の付け根の動脈や手首の動脈から細い管(カテーテル)を心臓まで進め、造影剤を注入して冠動脈の内腔を映し出すものです。病気の場所と程度がわかり、治療方針決定のためには欠かせない大切な検査です(図2)。Q.狭心症はどのように治療しますか?
A.狭心症の治療目的は症状を抑えるとともに、突然死・心筋梗塞を防ぐことです。治療法には大きく分けて、薬物療法・カテーテル治療・外科手術(冠動脈バイパス術)の3つがあります。薬物療法では、冠動脈を拡げる薬、脈拍数や血圧を下げて心臓の負担を減らすお薬を処方します。病気の進行を防ぐ目的で、血栓を予防するお薬やコレステロールを低下させるお薬もしばしば用いられます。カテーテル治療(図2)は、股の付け根や手首の動脈からカテーテルを冠動脈内に進め、風船(バルーン)や金属のメッシュ(ステント)を拡げるなどして、狭くなった内腔を拡張させる治療です。冠動脈バイパス術は、胸の内側の動脈や腕の動脈などを取り出し、冠動脈の狭いところより先の部分と大動脈をつないで心筋の血流を良くする外科手術です。
Q.では、どの治療法が良いのでしょう?
A.どの治療法にも一長一短があります。薬物療法では体に傷がつかず、危険な合併症はありませんが、お薬の副作用は起こり得ます。また冠動脈は狭いままなので、運動制限が必要になる場合や、完全に発作を予防できないこともあります。カテーテル治療では胸を切らずに血管を拡げることができ、入院期間も外科手術に比べて短く済みますが、危険な合併症も起こり得ます。また、1年もたたないうちに拡げた場所がまた狭くなることがあります(最近では、お薬を塗ったステントが使えるようになり、非常に少なくなると期待されています)。
外科手術では胸を切らなければならず、入院期間も長くなりますが、病気の進んだ場合や病気の場所によっては、カテーテル治療より安全なことがありますし、手術でしか治せない場合もあります。どの治療が最適かは患者さんの状態によって異なりますので、担当医師と良く相談して下さい。
また、どのような治療を受けても、再発や病気の進行を防ぐためには、生活習慣を改めるなどして冠危険因子を減らす努力が必要です。

