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カロチン、老化を抑えて免疫強化
植物性食品に多く含まれる
藤女子大教授 栗村 幸雄
ビタミンA効果
カロチンの名前はニンジン(キャロット)に由来しており、α−、β−、γ−カロチンやクリプトキサンチンなどがあります。体内でレチノールに変化してビタミンA効果を示すのでプロビタミンAとも言われております。普通、植物性食品中に多く含まれており種々のカロチノイドとして存在します。動物体内では合成できませんので卵黄やバターの黄色は鶏や牛の飼料に由来しているものです。
カロチンは緑色のクロロフイルとともに存在しており、秋、紅葉の季節になるとクロロフイルが分解して黄橙色に変化します。また、トマトやスイカの赤い色はβ−カロチンではなくリコピンという物質で、カロチン類ではありますが、ビタミンA効果はありませんので注意する必要があります。
カロチンの作用
1日にニンジン1本をカロチンの作用はビタミンA効果として評価されていますのでこれについて述べてみます。
(1)活性酸素の働きを抑えて老化や発ガンを予防します。
いろいろなビタミンA効果のうち最近、ガン抑制の効果が特に注目されるようになりました。疫学調査でガン患者の血中β−カロチンの量は健康な人よりもずっと少なく、同じようなことが患者家族にも当てはまるとの研究報告があります。
体内で活性酸素という物質が生成されますと、特に脂質の多い細胞で活性酸素が発生すると過酸化脂質をつくります。これは大変毒性が強く、細胞膜を刺激すると老化現象を起こすほか、細胞核では遺伝子(DNA)を傷つけて細胞のガン化を起こすと言われております。
この活性酸素に対するカロチンの役割はスーパーオキサイドジスムターゼ(SOD)と言う体内で活性酸素を分解して無害な物質に代える働きをする酵素とともに活性酸素と戦う抗酸化物質であると言われております。これにビタミンCやビタミンEが加わることで細胞や遺伝子のガン化を抑制する働きが一層強まります。
(2)免疫機能を強化する働きがあります。
人の体内に細菌やガン細胞などの異物が侵入すると、マクロファージと言う貪食細胞が防御する役割を果たしますが、β−カロチンが不足すると粘膜の角質化が起こり細菌に侵されやすくなりますが、β−カロチンには角質化を抑えマクロファージのもつ免疫機能を強化させる働きがあります。
(3)視覚機能を正常に保つ働きをもっています。
カロチンが欠乏すると、網膜の中にある視紅が減少し弱い光を感じなくなる暗調応不全になります。これは明るいところから暗い所へ入った場合、目が暗さに慣れるのに時間がかかるいわゆる夜盲症のことです。
これに対してカロチンは網膜の明暗感受性を高める働きをしますので夜盲症を防ぎます。この他に眼では涙腺の機能が衰え角膜や眼球の乾燥が起こり、ここから潰瘍に移行することがあります。
(4)生殖維持作用があります。
カロチンが不足すると妊娠しにくくなったり、出産数の減少や異常が起こることが知られております。
効果的な油料理ビタミンAの所要量
成人で一日当たりの所要量は男性が2000U(1200μg)女性では1800U(1080μg)になっております。ガンを予防するためには、1日当たり200gていどのニンジン1本を摂取することが望ましいと言われております。
カロチンは極端に大量でない限り余分に摂取してもとり過ぎの心配はなく、これが体内に蓄積され、半減期は200〜300日となっていますので、健康な人の場合は外部から補給がなくても必要な時に効果を発揮できるようになっております。β−カロチンはレチノールを2個つないだ形をしておりますのでレチノールに極めて近いものであり、α−カロチンからのレチノール生成はβ−カロチンの約半分ていどとなっております。
次に所要量を満たす上で吸収利用率を十分に考慮する必要があります。ビタミンAをレチノールからとるか、カロチンからとるかによっても異なります。レチノールは小腸から約90%の吸収利用率なのにカロチンは30〜50%ていどです。
また、調理の方法でもカロチンは煮たときは20〜30%、油で炒めた時は60〜70%になります。特に脂肪を多く取り込んだ食事ではカロチンの吸収利用率は95%とぐんと高まりますので油を用いた料理は効果的です。
種 類 | 存 在 |
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カロチン類 *α-カロチン *β-カロチン *γ-カロチン リコピン |
ニンジン ニンジン、緑葉、サツマ芋 ニンジン、アンズ トマト、スイカ、柿 |
キサントフィル類 ルテイン ツェアキサンチン *クリプトキサンチン カプサンチン フコキサンチン *エキネノン アスタキサンチン |
緑葉、卵黄 黄色トウモロコシ 黄色トウモロコシ、パパイヤ カボチャ、柑橘類 トウガラシ コンブ、ワカメ ウニ カニ、エビ、サケ |

