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NO.30 |
心臓麻酔国際シンポジウム報告
札幌医科大学麻酔学講座・大学院生
鎌田 紀子さん
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2005年9月3日から2日間、仙台市にて行われた心臓麻酔国際シンポジウムに参加いたしました。第2回となる今回は、国内外より、麻酔科はもとより心臓血管外科、循環器内科領域からも多くのエキスパートがシンポジストとして参加され、充実した学会となりました。
シンポジウム開催に先立って行われたセミナーでも取り上げられていましたが、今回のシンポジウムの大きなテーマの一つが「awake OPCAB」というものでした。狭心症など、虚血性心疾患に対する手術療法である冠動脈バイパス手術(CABG)は近年、機械や技術の向上により、人工心肺を用いずに心臓が拍動している状態で行う事が可能となり(OPCAB)、患者さんの負担が少ない手術方法として広く行われています。しかし、通常これらの手術では、全身麻酔が必要となります。この手術を全身麻酔ではなく、硬膜外麻酔という局所麻酔法を用い、患者さんの意識がある状態で行う手術がawake OPCABです。この手術の第一人者であるトルコの心臓血管外科の先生を招いてのシンポジウムでは、多くの活発な討論が行われ、関心の強さを感じました。
また、手術中に心臓などの状態を観察するための経食道心エコー(胃カメラのような形のエコーを食道から胃の中に入れ、手術の邪魔をする事なく、検査が出来ます)のセッションでは、技術的なアドバイスや貴重な画像が多く提示され、非常に勉強になりました。
今回私が、ポスターディスカッションで発表させていただいたのは、静脈麻酔薬であるプロポフォールの心保護作用に関する実験についてです。虚血によって起こる心筋障害への麻酔薬の影響については、多くの研究が行われており、特に吸入麻酔薬による心保護作用は広く知られています。しかし、静脈麻酔薬における心保護作用に関しては、現在も様々な意見があります。私が研究に用いているプロポフォールという静脈麻酔薬は、現在非常に良く使われているもので、手術時の全身麻酔薬としても、また集中治療室などでの鎮静薬としても多く用いられています。このプロポフォールを虚血前に投与したモルモットでは、有意にその後の心機能が回復するという結果となりました。しかし、その心保護作用がどのような機序によって起きるのかは明らかではありません。今後は、その機序に迫っていけるように研究を進めていきたいと思っています。
日本国内で行われた学会ではありますが、インターナショナルシンポジウムなだけあって、全てのセッションは英語のみで行われました。朝から夕方まで、英語漬けの毎日でくたくたになりましたが、優れた研究者の発表はたとえ母国語でなくても興味深くすんなりと耳に入ってくるものだと実感した2日間でした。
最後になりますが、本学会参加に当たり助成をしていただきました北海道心臓協会に心より厚く御礼申し上げます。

