NO.15 |
第16回日本循環器病予防セミナー報告
(1−1)
宇津木 恵
日本における虚血性心疾患死亡率は、種々の先進諸国と比べて少ないものの、近年の高齢化、食生活の欧米化やライフワークの変化などから、その死亡率は横ばいを示しています。また脳血管疾患死亡率は、近年減少してきてはいますが、依然欧米諸国より高いレベルにあります。循環器疾患は、一度発症すると致命的となるばかりでなく、重篤な後遺症を遺すものであり、その予防はきわめて重要です。このたび、7月6日〜11日に神奈川県湘南国際村センターにて開催された第16回日本循環器病予防セミナー(日本循環器管理研究協議会、日本心臓財団主催)に、北海道心臓協会の助成金を受け参加することができたのでその報告を行います。
<セミナーの目的>
本セミナーは、循環器疾患の臨床疫学および予防について学ぶことを目的に、毎年一回開催され、今年は16回目でした。受講者は、全国から日々循環器疾患治療に携わる臨床医および予防医学研究に関わる者からなり、今年は過去最高の53名の参加がありました。一方、講師陣は循環器疾患の治療や予防医学に関わる各分野の第一人者であり、約1週間寝食を共にして講義と演習によるセミナーが行われました。私は、北海道大学・岸玲子教授の推薦をうけ、参加いたしました。<講義・演習>
講義ですが、(1)疫学方法論(2)各種疾患の二次予防(3)BNP、βブロッカーについての説明(4)これからの循環器予防に関する示唆、の4つに大別され、一週間で予防医学の基礎、ならびに現在の循環器疾患予防に関する臨床的研究を学ぶことができるスケジュールとなっていました。朝8時30分より午後6時30近くまでおよぶ講義は、かなりハードなスケジュールで、それぞれの専門によって、得手、不得手がわかれ、講義終了後教えあったりする場面もみられました。本セミナーの特色として、毎夕食後〜深夜遅くまでなされる演習があります。当演習は、臨床、予防医学を専門とする7-8名でグループとなり、今年は「BNP」「βブロッカー」を用いた二次予防に重点をおいた研究デザインを作成し、最終日に発表を行うというものです。今年は臨床現場からの参加者が最多ということもあり、研究デザインのイロハから始まったものも少なくなく、私達のグループでは臨床的には意味があるのかどうか、疫学としてはどうかの検討が連日のようになされました。このグループ演習を通じ、他の地域で活躍する受講生と親交を深めることができ、今後研究を進めるにあたり、様々な示唆を得ることができました。また、互いに臨床の重要性、予防医学・疫学の重要性を認識することができたことは何より大きな収穫であったと思います。
最後になりますが、当セミナー参加に当たり、助成をしていただきました北海道心臓協会に、心より厚く御礼申し上げます。