NO.18 |
日本心血管カテーテル治療学会報告
(1−1)
坂井 英世
この度、(財)北海道心臓協会の研究開発調査助成を受け、第3回日本心血管カテーテル治療学会に出席させていただきました。学会は平成15年7月31日から8月2日までの3日間、仙台市で開催されました。また、本学会の開催に併せて、まもなく認可される本邦初の冠動脈用ステントグラフトの技術講習会が開催されたこともあり、冠動脈カテーテルインターベンション(Percutaneous coronary intervention ; PCI)治療に携わる医師・看護師・放射線技師・臨床工学技師など、全国から数多くの参加がありました。この領域に携わる医療スタッフが熱心に討論・質疑応答をしていたことが印象的です。
PCIは循環器内科の領域にありながらも、患者様に医師が直接的に手技を下すという外科的要素の極めて強い分野で、普遍的な学問的要素があることはもちろんのこと、医療人としての姿勢が治療結果に反映される領域と思います。本学会は歴史の浅い学会ではありますが、"PCI for the patient"をテーマとして設立され、以後、活発な学会活動を展開しています。
PCIは冠動脈バイパス手術に比し圧倒的に低侵襲な冠動脈血行再建が可能であることに注目が集まり、本邦でも数多くの施設で行われています。しかし、通常のバルーン拡張術(Plain old balloon angioplasty ; POBA)のみでは、本治療に適した病変においてさえも30%以上の割合で起こる再狭窄がPCI治療の最大の欠点で、その克服を目指して様々なNew deviceが開発され、臨床の現場に応用されています。特にStentは再狭窄の代表的な原因であるElastic recoilとNegative vascular remodelingを排除し再狭窄率を低下させることと、メーカーの努力によりUser friendlyなDeviceへと改良されたことから、本邦の数多くの施設で圧倒的な使用頻度を誇るに至っております。しかし、POBAでしばしば問題となる急性冠動脈閉塞をほぼ確実に回避出来る上に良好なAcute gainを容易に得られるという利点から、Stentが安易に用いられる傾向があることは否めず、Neointimal hyperplasiaを原因とするStent内再狭窄(Instent restenosis ; ISR)が既存のDeviceのみでは克服困難な臨床上の大きな問題となっております。
既に欧米・アジア諸国ではISRの克服を目指して、冠動脈内放射線照射療法や薬物溶出ステント(Drug eluting stent ; DES)が臨床の現場に応用されており、様々な論文・学会報告でその有効性が証明されております。今年度の本学会の主管である仙台厚生病院は東北地区随一のHigh volume centerで、先述の先端治療に積極的に取り組んでいる施設ということもあり、本学会ではそれらの先進的な治療の報告が数多くなされていました。DESについては、近い将来、本邦でも正式に認可される見通しですが、植込10年以降の長期成績がいまだ不明なDeviceでもあり、その適用には慎重にならなくてはなりません。その意味でも、本学会に参加し、それらの先端的なDeviceについての知見を得ることが出来たのは有意義なことと思います。
小生は本会で「CloserTM deviceでの止血直後に大腿動脈急性閉塞を合併した1例」を表題とする症例報告を行いました。冠動脈疾患の患者様では既に全身性の動脈硬化性変化を来たしていることが多く、有症候性ではなくともカテーテル手技を施すことによりそれを顕在化させてしまう場合があり、示唆に富む症例として評価を得ました。
最後になりますが、本学会で研鑽する場を与えていただいた北海道心臓協会に深謝申し上げるとともに、そこで学んだことを活かし皆様のお役に立てるよう努力する所存です。今後とも御指導・御鞭撻をいただきますようお願い申し上げる次第です。